2003 Fiscal Year Annual Research Report
世界遺産敦煌(莫高窟)遺跡保存のための広域地下水理と斜面浸食に関する学術調査
Project/Area Number |
14404004
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷本 親伯 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10109027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘 英三郎 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80029165)
古川 忠穏 大阪大学, 大学院・工学研究科, 学内講師 (70273597)
今井 克彦 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30301253)
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Keywords | 遺跡保存 / 敦煌莫高窟 / 礫岩 / 電気探査 / 斜面侵食 / 地下水 / 結露 / 潮解 |
Research Abstract |
2年目(最終年度)となる平成15年度の調査は,計画通り実施できた。したがって,当初に予定した(1)層分布と地下水移動経路,(2)莫高窟を構成する地層の透水性と塩分析出条件,(3)地質と地殻変動帯の特定,(4)礫岩から成る崖面の安定性と耐震性評価に関する4つのテーマの中,(1)〜(3)を終了したことになる。(1)〜(4)に対する平成15年度の成果は,次の通りである。 (1)莫高窟東側を流れる大泉河の水源は,三危山と祇連山に挟まれる標高1000〜1500mの高原であり,降雨や降雪による表面水が地下水となって,涵養される。その9割以上が東から西へと移動し,党河となって北流している。人工衛星画像上に表面水の流路と断層系を示した。 (2)崖面を構成する4つの地層について,2層は原位置透水試験によりその透水性を確認し,他の2層については大型供試体を日本に輸送して,室内透水試験と透気試験により定量的に評価した。また,塩分析出条件については,析出する塩の成分により「潮解」を考慮した室内実験を遂行し,比抵抗値,塩分濃度および飽和度の関係を究明した。この分野では初めての試みである。 (3)人工衛星画像の分析による広域地質分布,地殻変動の状況について,三危山断層と観音井断層を確認し,基盤岩である片麻岩(先カンブリア紀)に第三紀と判断される花崗岩の貫入状況が画像処理により判明した。大きな成果と考える。 (4)礫岩から成る崖面の安定性について,主要なき裂(不連続面)の精査を完了した。急峻な崖面のため,崖下から3Dスキャナーによる測量を実施し,良好な結果を得た。 全般に,20の洞窟を越える温度湿度の基礎データ,莫高窟の上部と下部における連続した環境測定により大量の貴重なデータを取得することが出来た。これらの結果を総合的に分析して,遺跡保存に対する提言を行ってゆきたい。分析が一段落するごとに論文発表を行う予定である。少なくとも5〜6編のものを2年以内に公表する所存である。
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