2004 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯雨林におけるアリ類による食植者制御に関する研究
Project/Area Number |
14405004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市岡 孝朗 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (40252283)
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Keywords | アリ類群集 / 熱帯雨林 / 東南アジア / 林冠生物 / 着生植物 / 食植者制御 / ボルネオ島 |
Research Abstract |
ボルネオ島に分布する熱帯雨林の林冠部におけるアリ類の存在量と時間的空間分布を知るために、今年度も、昨年度に引き続き、マレーシア国サラワク州の熱帯低地にあるランビル国立公園のフタバガキ混交林において、当地の林冠到達システムを用いて、林冠を構成するフタバガキ科を中心とする樹種15種の林冠部でのアリ類の個体数調査を2回おこなった。また、林冠部に生息する着生植物、およびそれによって形成される樹上土壌に着目して、それがどの程度、アリの巣場所として利用されているのかについて野外調査をおこなった。さらに、林冠クレーンを用いて林冠に存在する枯れ枝内のアリを採集し、そのアリ相を解明した。 昨年度までに明らかになった、地上部と樹上部にまたがって採餌行動圏をもつ種類はきわめて少数のものに限られるという現象が、時間的に安定で空間的にも広い普遍性をもって認められることが確かめられた。一部の林冠部には地上部に営巣する種類の樹幹への行動圏の拡大が見られる一方、着生植物の空洞部の内側に営巣するアリ種が林冠の広い部分を占めていることが確かめられた。両者の分布域はほとんど重複しないうえ、他のアリ類の分布に影響を与えていた。また、後者の着生植物に営巣するアリは、営巣する着生植物種以外のつる植物、着生植物の量・分布を制御している可能性が示唆され、また、この影響を通じて間接的に他のアリ種の分布に影響を与えている可能性が示唆された。葉の食害とアリの個体数の相関から、いずれのアリ種も、林冠部において捕食者として食植者制御に大きな役割を果たしていることが推定され、樹上のアリ個体数を増加させる要因として花外蜜腺の存在が大きな役割を果たしていることが示唆された。
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Research Products
(1 results)