2004 Fiscal Year Annual Research Report
汎熱帯海流散布植物の分子系統地理:地理的障壁を越えた遺伝子交流と種分化
Project/Area Number |
14405015
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
立石 庸一 琉球大学, 教育学部, 教授 (80114544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶田 忠 千葉大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80301117)
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Keywords | 汎熱帯海流散布植物 / 分子系統地理 / 地理的障壁 / 遺伝子交流 / オオハマボウ / Hibiscua pernambucensis / モダマ / コウシュンモダマ |
Research Abstract |
熱帯・亜熱帯域の沿海地に広く分布する汎熱帯植物の中には種子散布を海流に頼るものが多い。これらの植物では、海流による散布体の広範囲にわたる分散が行なわれ、極めて広い分布域が獲得でき、また集団間の遺伝的交流が即されていると推定される。その一方、分布域があまりに広いと、遠隔の集団間の遺伝子交流が少なくなることや、地域的な環境の違いが集団ごとに異なる選択圧をおよぼすことで、集団間の遺伝的分化や種分化が促進される可能性もある。全世界の熱帯・亜熱帯海岸域に広域分布する汎熱帯海流散布植物は、集団間の遺伝的交流をどの程度保つことで種のまとまりを維持しているのかを解析したい。 代表的な汎熱帯海流散布植物であるグンバイヒルガオとナガミハマナタマメ、オオハマボウとその近縁種、およびヒルギ類、モダマ類ついても集団を探索し、サンプリングを行った。本年度の現地調査は南アフリカ共和国、ガーナ共和国、シンガポール、スリランカ、オーストラリア、ブラジルで行い、収集した乾燥葉からDNAを抽出し、塩基配列を決定し、解析を進めている。 とくに、オオハマボウとその近縁種について、昨年度の成果を基礎に更に多くの新知見を得た。オオハマボウは旧熱帯に、その近縁種Hibiscus pernambucensis新熱帯に広域分布する。さらに小笠原には固有のモンテンボク、東アジアにはハマボウ、西インド諸島にはH. elatusがそれぞれ分布する。これらの種の多くの集団について、葉緑体DNAの翻訳領域および非翻訳領域の合計7800塩基対の配列情報による分子系統学的解析およびハプロタイブ解析を行い、その結果に基づいて以下が考察された。1)オオハマボウでは広域に分布するハプロタイブがあることから、集団間の海流散布による種子の移動が高頻度にある。2)パナマ地峡はH. pernambucensisの太平洋側と大西洋側の集団間の種子の移動による遺伝子交流を妨げている。3)オオハマボウとH. pernambucensisの遺伝的な分化は太平洋東部で起こっている。4)大西洋側では、オオハマボウとH. pernambucensisの間で遺伝子流動が生じている可能性がある。 さらにモダマ類について、葉緑体DNAの約3700塩基対の配列情報による分子系統学的解析を行い、これまでモダマとされていたものの中で琉球列島、台湾南部、南太平洋の集団はモダマとは明瞭に異なる種、コウシュンモダマであることを明らかにした。 これらの結果については、国際学会で発表した。
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Research Products
(3 results)