2002 Fiscal Year Annual Research Report

グリーンランドのホッキョクグマにおけるビタミンAの蓄積の研究

Research Project

Project/Area Number	14406001
Research Institution	Akita University
Principal Investigator	妹尾春樹秋田大学, 医学部, 教授 (90171355)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	佐藤岳哉秋田大学, 医学部, 助手 (10312696) 今井克幸秋田大学, 医学部, 助手 (80006741) 佐藤充秋田大学, 医学部, 助教授 (60226008)
Keywords	グリーンランド / ホッキョクグマ / ビタミンA / 肝臓星細胞 / ダイオキシン / PCB / 環境汚染物質 / 臓器障害
Research Abstract	グリーンランドのホッキョクグマの捕獲のためデンマーク国立環境研究所のC.Sonne-Hansenn博士、ノルウエーオスロ大学のR.Blomhoff博士と詳細な打ち合わせをおこない、平成15年4月に現地にて動物を捕獲することとなった。Sonne-Hansenn博士はすでに100体以上のグリーンランドのホッキョクグマの全身組織の固定試料を収集しており、それを使わせてもらえることとなり、現在解析を進めている。比較対象研究として現在までにノルウエー領のスバールバル群島(北緯80°)においての国際共同研究で得られた、ホッキョクグマの全身の器官および血清や胆汁のビタミンAを解析した、その結果、ホッキョクグマ(食物網の上位に位置する)動物はヒトやラットに比較して100倍もの高濃度のビタミンA(レチニルエステル)を肝臓星細胞に貯蔵していることが明らかになった。この動物では星細胞の数(厳密には細胞密度)はヒトやラットと同じであり、個々の星細胞のビタミンA貯蔵能力が大きいことが判明した。このようなビタミンA大量貯蔵動物では肝臓にいくつかの興味深い形態学的な所見がみつかった。ヒトやラットをはじめ多くの動物では肝臓実質細胞の核は細胞の中心に位置している。ところがこれら食物網の上位に位置し、大量のビタミンAを星細胞に貯蔵している動物では核は類洞(すなわち血液の流れている毛細血管)の側にずれていた。一方でホッキョクグマと同じく食物網の上位に位置するホッキョクギツネではビタミンAは肝臓で星細胞のみでなくグリソン鞘とよばれる結合組織に存在する間葉系細胞にも貯蔵されている。それらのグリソン鞘には構造が破壊されているものも見られた。ビタミンAを実験動物に大量に投与するとグリソン鞘に存在する間葉系細胞にも取り込まれ貯蔵されることはしばしば観察されるが、グリソン鞘の構造そのものが破壊されることはない。近年、北半球の工業国から排出される環境汚染物質は北極圏に「台所の流し」のように流入し、そこに棲む動物には高濃度のダイオキシンやPCBが蓄積している。もちろん動物だけでなく、ヒト例えばイヌイット婦人の母乳にも高濃度の内分泌かく乱物質が検出されている。上述のホッキョクギツネの肝臓で観察された障害はビタミンAと内分泌かく乱物質との相互作用による可能性があり、ヒトにも警告を与える所見といえる。平成15年4月での現地での動物の捕獲の際にはこれらの臓器障害に特に配慮して試料を収集する予定である。

Research Products

(7 results)

All Other

All Publications (7 results)

[Publications] Higashi, N.: "Distribution of vitamin A-storing lipid droplets in hepatic stellate cells in liver lobules-A comparative study-"Anat.Rec.. 271A. 240-248 (2003)
[Publications] Senoo, H.: "Decreased capacity for vitamin A storage in hepatic stellate cells in arctic animals"Comp.Hepatol.. (in press). (2003)
[Publications] Higashi, N.: "Intralobular distribution of vitamin A-storing lipid droplets in HSCs with special reference to polar bear and arctic fox"Comp.Heparol.. (in press). (2003)
[Publications] Dragland, S.: "Several culinary and medicinal herbs are significant sources of dietary antioxidants"J.Nutr.. (in press). (2003)
[Publications] Sato, T.: "Expression of peroxisome proliferator-activated receptors (PPARs) in hepatic stellate cells"Comp.Hepatol.. (in press). (2003)
[Publications] 妹尾春樹: "ビタミンA研究の新たな展開-実験室から北極圏へ-"細胞. 34. 86-87 (2002)
[Publications] 妹尾春樹: "医学大辞典"医学書院(in press). (2003)

2002 Fiscal Year Annual Research Report

グリーンランドのホッキョクグマにおけるビタミンAの蓄積の研究

Principal Investigator

妹尾 春樹 秋田大学, 医学部, 教授 (90171355)

Research Products

[Publications] Higashi, N.: "Distribution of vitamin A-storing lipid droplets in hepatic stellate cells in liver lobules-A comparative study-"Anat.Rec.. 271A. 240-248 (2003)

[Publications] Senoo, H.: "Decreased capacity for vitamin A storage in hepatic stellate cells in arctic animals"Comp.Hepatol.. (in press). (2003)

[Publications] Higashi, N.: "Intralobular distribution of vitamin A-storing lipid droplets in HSCs with special reference to polar bear and arctic fox"Comp.Heparol.. (in press). (2003)

[Publications] Dragland, S.: "Several culinary and medicinal herbs are significant sources of dietary antioxidants"J.Nutr.. (in press). (2003)

[Publications] Sato, T.: "Expression of peroxisome proliferator-activated receptors (PPARs) in hepatic stellate cells"Comp.Hepatol.. (in press). (2003)

[Publications] 妹尾春樹: "ビタミンA研究の新たな展開-実験室から北極圏へ-"細胞. 34. 86-87 (2002)

[Publications] 妹尾春樹: "医学大辞典"医学書院(in press). (2003)

妹尾春樹秋田大学, 医学部, 教授 (90171355)