2002 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおけるウイルス性脳脊髄炎のウイルス病心理学的解析
Project/Area Number |
14406010
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岩崎 琢也 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (90146027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 智 国立感染症研究所, 獣医科学部, 室長 (90213157)
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Keywords | 狂犬病 / ニパウイルス感染症 / エンテロウイルス71 / 感染病理 / 中枢神経系 / ウイルス性脳炎 / 東南アジア / ウイルス抗原 |
Research Abstract |
本邦に上陸する可能性が指摘され、重篤な神経症状を来す狂犬病・エンテロウイルス71・ニパウイルス、西ナイルウイルス、さらには原因不明の脳炎疾患を対象とし、人体ならびに動物感染材料を用いて、これらのウイルス感染の性状とその発症病理を解明することを目的とした。とくに、広義の狂犬病ウイルスには遺伝的多様性が存在することが指摘されているが、それぞれの型の違いによる臨床像の違い、発症病理は十分に解明されていないこと、また、狂犬病は臨床的に脳炎型(狂躁型)と麻痺型に大別されるが、この違いがウイルス側に由来するのか、宿主側に由来するかを対象としている。本研究ではこの臨床症状の多様性を決定する因子がウイルスに内在する可能性を明らかにする目的で、動物ならびに人体剖検例のウイルス分離ならびに分子生物学的解析を行い、中枢神経組織内に侵入したウイルスの多様性を明らかにする。Nipahウイルスならびにエンテロウイルス71、さらには原因不明の脳炎組織についても、同様にウイルス病理学的・分子生物学的解析を開始した。 本年度はこれらの臨床検体についてマラヤ大学(マレーシア)、聖ルカ医学センター(フィリピン)等との共同研究を開始した。しかし、日本を含めた東南アジア各地における剖検率(剖検数÷病院内死亡数)は非常に減少し、多くの病院で10%未満である。フィールドには多くの感染症死亡例が存在するにも関わらず、殆どが剖検されていない。唯一Nipahウイルスの剖検例について共同研究を開始することができた。 一方、実験室での研究として、種々の遺伝型の狂犬病ウイルスを同定できる抗体を作製した。また、試験管内でNipahウイルスの核蛋白、P蛋白を融合蛋白として発現させ、現在精製作業を開始した。精製後ウサギに免疫することにより、それぞれの蛋白を認識する抗体が得ることができ、貴重なNipahウィルス感染剖検例において、免疫組織学的解析が可能となる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 岩崎琢也, 永田典代, 清水博之: "エンテロウイルス71脳炎"小児感染免疫. 14(2). 133-138 (2002)
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[Publications] 岩崎琢也, 清水博之, 永田典代: "エンテロウイルス71"病理と臨床. (印刷予定). (2003)
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[Publications] 峰咲幸哲, 本田まりこ, 岩崎琢也, 白木公康: "BALB/cマウスへの単純ヘルペスウイルス2型臨床分離株経膣接種による神経伝達経路と脊髄炎の発生病理"東京慈恵会医科大学雑誌. 117(6). 427-439 (2002)
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[Publications] Inoue S, Sato Y, Hasegawa H, Noguchi A, Yamada A, Kurata T, Iwasaki T: "Cross-reactive antigenicity of nucleoproteins of lyssaviruses to a monospecific anti-rabies virus nucleoprotein antiserum on paraffin sections of formalin-fixed tissues"Pathology International. (in press).