2002 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンで多発するメープルシロップ尿症の分子疫学的調査
Project/Area Number |
14406023
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 肇 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40030978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 久英 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80189258)
西山 馨 神戸大学, 医学部, 教授 (00150061)
松尾 雅文 神戸大学, 医学部, 教授 (10157266)
白川 卓 神戸大学, 医学部, 助教授 (30171044)
竹島 泰弘 神戸大学, 医学部附属病院, 助手 (40281141)
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Keywords | メープルシロップ尿症 / フィリピン / E2遺伝子 / 遺伝子欠失 |
Research Abstract |
フィリピンでは先天代謝異常症のメープルシロップ尿症(MSUD)が多発している。MSUDは出生してすぐに発症し、適切な治療が施されないと死に至る重篤な疾患である。そのため、世界的にMSUDの報告は少ない。本年度においてフィリピンのメトロマニラ地区にある病院のなかの希望する産科で出生した新生児を対象として、ろ紙血を用いたMSUDのマススクリーニングを実施した。そして、新たに3名のMSUD患者を発見した。わが国では年間0-2名の発見にとどまっており、フィリピンで多発している現状が改めて認識された。 今までに発見された患者とあわせて20名以上となり、その遺伝子解析を実施した。MSUDではロイシン、イソロイシン、バリンの3種のアミノ酸が蓄積するが、これは分子鎖アミノ酸の代謝が分子鎖ケト酸脱水素酵素の段階で阻害されたために生じる。分子鎖ケト酸脱水素酵素を構成する3つのタンパクのうち、最も遺伝子異常の頻度の高いE2タンパクの遺伝子に焦点を絞り、その異常を解析した。E2遺伝子を構成する11個のエクソンを対象としてPCR増幅直接シークエンス法により遺伝子の異常を検索した。その結果、エクソン11の増幅されない症例が少なからず発見された。そして、これらの症例でPCR増幅できない原因をゲノムレベルで解析していった。その結果、イントロン10からエクソン11にかけて大きな遺伝子の欠失があることが判明した。そこで、その欠失の断端部分を特異的に増幅できるプライマーを設計して、PCR増幅によりその欠失異常を検出できる系を確立した。この方法によりMSUD患者で遺伝子の異常の有無を解析したところ、同じ遺伝子の異常をホモで持つ患者あるいはヘテロで持つ患者が多数発見された。この結果は、この遺伝子の異常が存在することがフィリピンでのMSUDの多発する原因であることを示すものであった。 今後さらにMSUD患者の発見に努めるとともに、遺伝子解析をもすすめフィリピンでの遺伝子異常の全体像を明らかにする予定である。
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