2002 Fiscal Year Annual Research Report
表象の種類とその認知機能に関する相互作用主義的観点からの研究
Project/Area Number |
14510004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
信原 幸弘 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (10180770)
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Keywords | 表象 / 認知機能 / 言語的表象 / 絵画的表象 / 分散表象 / 構文論的構造 / 文脈依存性 |
Research Abstract |
表象にはさまざまな種類があるが、そもそもあるものが表象であるための最小の条件は何かを考察し、表象の表象たる所以を探った。認知者が対象Xに対してその表象を形成するとき、ふつうXは認知者に異なる文脈で異なる刺激を与えるにもかかわらず、認知者はつねに同じ状態を形成する。ここには多様な刺激を同一の状態に集約する一定のメカニズムがあると考えられる。そこで、あるものが表象であるための最小条件とは、そのものがそのような集約メカニズムに基づいて形成されることだと結論づけられる。表象はこのような特性のほかにも、表象から表象への変形や行動の産出への寄与などの特性をもちうるが、表象が表象であるためには最小限、集約メカニズムによる形成が必要である。 次に、表象の種類およびその機能について考察した。表象には大きく分けて、言語的表象、絵画的表象、分散表象の三種類がある。言語的表象は構文論的構造をもち、形式的推論を可能にする点にその最大の特色がある。それは特定の文脈に限定されない文脈独立的な表象である。絵画的表象は、馬の絵を馬の絵として理解する能力が馬を視覚的に表象する能力に依存するように、視覚的表象に依存する。そして視覚的表象も含めて一般に知覚的表象は脳の分散表象であると考えられる。従って、絵画的表象は分散表象に依存する派生的表象である。分散表象は言語的表象に比べて文脈依存的である。しかし、それは文脈の特異性に応じた繊細な行動を可能にする点に大きな利点がある。
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Research Products
(2 results)