2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 知正 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50110284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門脇 俊介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90177486)
宮本 久雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50157682)
山本 巍 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70012515)
信原 幸弘 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (10180770)
野矢 茂樹 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (50198636)
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Keywords | 他者 / 現象的他者 / 意味の他者 / 論理空間 / 公共哲学 / 多文化主義 / 応答 / 多次元性 |
Research Abstract |
研究目的に沿って、『ソクラテスの弁明』などのギリシャ思想、ユダヤ教に発しキリスト教へ展開するヘブライ思想、古代神話から中世仏教、儒教を経て国家神道に至る日本宗教思想、西田哲学などの日本近代哲学、カントの普遍主義からドイツ観念論を経てナショナリズムに至る近代西欧思想、アーレント、ハーバーマスからリップマン、サンデルらまでの現代欧米の公共哲学、ハイデガー、ウィトゲンシュタイン、レヴィナス、現代英語圏の「心の哲学」など、従来の哲学が「他者の他者性」をどのように把握してきたかについて広範な再検討を行なった。結果として、次の2点において最大の成果が得られた。 1)超越論的次元においては、ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』に関する詳細な研究によって、現象的他者とは異なる「意味の他者」という概念が得られた。現象的他者は近代の伝統であった主観主義的他我構成論では構成困難になるが、『論考』の視点からは、日常言語の論理空間内に問題なく収まるものにすぎない。「他者の他者性」が真のものとなるのは、むしろ他の論理空間の主体であるような「意味の他者」であり、このような他者はそのつどの「私」の論理空間にとってつねに理解不可能な他者として、したがって語ることも示すこともできない他なるものとして浮かび上がるのである。 2)こうした「意味の他者」との関係につねに開かれながら、なおそれが理解可能となる希望を追求するとき、公共哲学的次元において、近代を支配したナショナリスティックな「自己-他者-公共世界」像とも、それの陰画であるモノカルチュラルな「自己-他者-公共世界」像とも異なり、多文化主義的観点とコスモポリタン的観点を相補的に備えた、「応答的」(レスポンシヴ)で「多次元的」(マルティディメンショナル)な「自己-他者-公共世界」像が構想可能となる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 信原幸弘: "生命のひろがり"哲学. 第54号. 131-141 (2003)
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[Publications] 信原幸弘: "捉えがたき明晰さ-知覚内容の非概念性"思想. 第949号. 142-160 (2003)
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[Publications] 村田純一: "技術の哲学"科学技術社会論研究. 第1巻. 97-103 (2002)
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[Publications] 山本 巍: "真理と政治の和解-ソポクレス『アンティゴネ』からプラトン『クリトン』へ"国際社会科学. 第52号. 15-40 (2003)
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[Publications] 高橋哲哉: "「人道に対する罪」をめぐる「法-外」な二つの試み"法社会学. 第56号. 16-25 (2002)
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[Publications] 高橋哲哉: "Nation and Sacrifice"UTCP Bulletin. 第1号. 33-44 (2003)
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[Publications] 野矢茂樹: "論理哲学論考を読む"哲学書房. 302 (2002)