2005 Fiscal Year Annual Research Report
西洋哲学史における決疑論の成立とその現代的諸問題への応用に関する基礎研究
Project/Area Number |
14510017
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤本 温 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (80332097)
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Keywords | 決疑論 / 応用 / 徳論 / 良心 / 技術者倫理 / 賢慮 |
Research Abstract |
本研究では、西洋哲学史においてあらわれた決疑論(casuistry)を、その歴史的経緯をふまえて理解すること、及び、現代の諸問題への応用の可能性の解明をめざしてきた。そして、本研究の最終年度である平成17年度においては、決疑論は本来、単なる問題解決法ではなくて、「徳論」であったことを再確認するに至り、徳論としての決疑論の更なる探求が望まれることが明らかになった。決疑論は西洋哲学史において長い歴史を持つが、ごく通俗的には、何か問題が発生したときの用心に解決の型を用意しておくことであると理解されている。近年、応用倫理学において、決疑論の重要性と有効性が指摘され始めている。しかし、決擬論の歴史を無視した紹介がなされるなどの問題点があることも確認できた。本年度の具体的成果は以下の通りである。 1.歴史研究として、論文「トマス・アクィナスと決疑論的思考について」において、決疑論的思考の先駆者としてトマス・アクィナスの立場を、特に良心(conscientia)の適用(applicatio)という視点から考察して、その方法の現代的意義と、賢慮という徳の公共的理解の必要性を提案した。「適用」といっても、ルールをそのまま適用するのではなく、ルールの変更を公共の場で決定する道がアクィナスの徳論においては-特に、「思量」との関わりにおいて-存することを明らかにした。なお、この4年の研究期問に収集した、決疑論に関する歴史的資料を今後、わかりやすい形にまとめて公表したいと考えている。 2.現代への応用としては、論文「技術倫理教育の諸問題」「大学・高専における技術者「倫理」教育について」において、決疑論という難関な言葉を避けて、事例(case)を用いて行われる倫理教育のあり方を、人柄の形成ということを意識しつつ論じた。
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Research Products
(4 results)