2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510021
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
市來 津由彦 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30142897)
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Keywords | 朱子学 / 地域社会 / 科挙 / 進学運動 / 朱熹門人 |
Research Abstract |
本研究は、士人に学ばれるものとしての「朱子学」の成立は朱熹以後の南宋から元、明にかけての文化、社会史的状況から生じてきた問題であると捉え、慶元6年(1200)の朱熹の死の前後から南宋末までに焦点を絞り、朱熹学術受容者層の動向に注目することにより、士大夫思想界で南宋後期にいわゆる「朱子学」が形になっていくすがたを解明しようとするものである。 本年度は研究計画の最終年度であったが、研究遂行及び成果発表の状況は、以下の通りである。 1.理論研究面については、これまで、朱熹没後の「朱子学」形成過程における朱熹門人の働きと意義、また朱熹学術が科挙との関係でその一次受容者に浸透するしくみについて検討した。本年度は、「理」という視座から世界を捉えるという朱熹の学術が同時代の士人に対して提示する思考枠組をその受容者との関わりから考察するという視点で、その学術の浸透力を検討した。用語形成に関する発表論文はその成果の一部である。この課題は今後も発展させる予定である。 2.実態研究面については、朱熹没後の朱熹初伝、再伝の人網と朱熹の人網の比較を志向してきたが、朱熹門人層に関して資料的制約があり、検討結果が人網の地域性の広狭といった内容に結局とどまりかねず、これを打開してより高度の問題を追究するために朱熹の人網が持つ士大夫文化としての特性を緻密に検証する必要を覚え、その絶好の資料としてある朱熹践文の解析を開始した。発表した「訳注稿」はその成果の一部である。この研究は今後も続けることになる。 ・経費の一部は本研究で購入した電子資料使用とデータ整理のための専用PCの購入にあてた。 3.研究計画が最終年度だが、研究が二方向に分解して新たな課題へと展開するかたちで年度が 終了した。そこでこのうちの実態研究面の朱熹と朱門、及び個々の朱門のネットワーク資料のまとめはさらなる検討を期することとし、理論研究面の成果をまとめて報告書を作成した。 ・経費の一部はこの報告書の印刷にあてた。
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Research Products
(2 results)