Research Abstract |
本年度,研究代表者は,シャバラスヴァーミンによる『ミーマーンサースートラ』註の第3巻全体の分析的梗概を,研究分担者との討議を重ね増補しつつ,それに基づいて本研究全体を締めくくる論文「祭式構成要素間の階層の根拠として助力(upakara)を説くミーマーンサー学派の異説について」を発表した。祭式構成要素間の階層性についての定説を定めたスートラ3.1.2は,或るものが祭式における従属要素となることの根拠は,それが「他のものを目的とすること」(pararthatva)にあることを明記する。この定説に対し,派内で最も有力な異説は,それを助力(upakara)に求めるものであった。研究代表者は,この異説が着目する助力とはどのようなものであるか,またこの説がいかなる理由から異説として退けられたのか,を考察した。この研究に必要な,諸学派で考える階層的秩序に関する資料を,国内各地の大学への出張により収集した。また,日本印度学仏教学会第55回大会(平成16年7月駒澤大学)に旅費により参加し,「クマーリラにとってのヴェーダ文の意図」を発表した。第3巻第1章第7論題において,シャバラを継承したクマーリラは,ヴェーダが非人為の聖典であるにも拘らず,ヴェーダ文の「意図」(vivaksa)を問うことが,何故可能であるのかを検討し,世間の日常会話における話し手の意図に準じた比喩表現,ヴェーダ文の作り手ではなく伝え手の意図,音声テキストヴェーダを身体としてもつ最高アートマンが抱く意図,という3通りの解釈を提示しているという内容である。更に研究代表者は,平成16年11月に外国旅費を用いて,ハーバード大学のLaurence McCrea博士のもとに出張し,論文"The Dual Significance of a Periodical Sacrifice : Nitya or Kamya from the Mimamsa Viewpoint"および"Notes on Kumarila's Approach to the Ritual Scripture"の内容を検討し,レヴューを受けた。更に年度末には,3年間の研究期間中に発表した諸論文を集約して研究成果報告書を作成した。
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