2002 Fiscal Year Annual Research Report
華厳経入法界品梵文原典の批判的校訂と現代語訳にもとづく華厳経の新解釈
Project/Area Number |
14510026
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
田村 智淳 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (80025064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桂 紹隆 広島大学, 文学部, 教授 (50097903)
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Keywords | 華厳経 / 十地経 / 加持 / 神変 / adhisthana |
Research Abstract |
研究代表者と研究分担者は、平成9〜11年度の科学研究補助金(研究代表者:高野山大学教授越智淳仁)を受け、その間に、華厳経入法界品の梵語原典・チベット語訳・三種の漢訳のテキストの電子化を終えている。本年度は、さらに華厳思想研究に不可欠である『十地経』の梵文原典およびチベット語訳のテキストの入力を終えた。 入力済みの華厳経入法界品梵文原典(Vaidya本)に関しては、入力テキストの校正ならびにSuzuki本との校合を謝金でもって進めている。 今後は梵語原典の諸写本を参照したうえで、入力されたテキストをクリティカル・エディションとして完成することを目指しているが、現在われわれが入手しているのはケンブリッジの二写本(Ms.Add.917,Ms.Add.1467)だけである。来年度は上記以外の完全写本のマイクロフィルをできる限り収集する準備をしている。 収集予定の諸写本はスキャナーでパソコンに取り込み、これらの写本と入力された梵・蔵・漢のテキストとをモニター画面上でリンクする方法を試してもいる。 以上のテキスト・クリティークのための資料作り以外に、研究代表者は華厳経入法界品に頻繁に現れる"adhisthana"(威神力・加持)の研究を続けた。この語に、チベット語訳ではほぼ統一的に同一の訳語(BYUIN GYI RLABS)が見られるのに対して、漢訳では種々の訳語が与えられている。漢訳40巻本では、「虚所」「依虚」「依止」「安住」等の訳語に加えて、多くの箇所で「變化」「神變」「神力」「神通」「願力」「心願」「威神力」「神通力」「加持」「護念」「化作」等の訳語が見られる。さらに、この語の先行研究で既に指摘されていることであるが、チベット語訳が"THOGS PA MED PA"、漢訳が「無所障碍」あるいは「無尽」となっている箇所がある。これらの訳語の原語がすべて"adhisthana"であることを確かめるためには、より多くの写本を参照する必要がある。 本研究に携わる二人は、昨年12月8日から15日までバンコクでの「第13回国際仏教学会」に参加した。仏教学の最新情報、特に最近ガンダーラ地方で見つかった貴重な写本群(Schoyen Collection)に関する情報を得た。
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