2002 Fiscal Year Annual Research Report
チベット仏教におけるラムリム思想の基盤に関する研究
Project/Area Number |
14510028
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Research Institution | Minobusan University |
Principal Investigator |
望月 海慧 身延山大学, 仏教学部, 講師 (70319094)
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Keywords | 大乗仏教 / チベット仏教 / ディーパンカラシュリージュニャーナ / アティシャ / 菩提道灯論 / 菩提道灯論細疏 / ラムリム / ローサン・ペルデン・テンジン・ニャンタク |
Research Abstract |
ディーパンカラシュリージュニャーナの著作のテキスト・データベース化の作業を行い、コンピュータへのデジタル・テキストの入力作業を終了した。現在、入力されたテキストに基づいて、諸版間のヴァリアント調査を継続して行っている。テキスト校訂の終了した文献に関しては、翻訳作業が進行している。次年度以降の作業は、ヴァリアント情報を添えた全集テキストの完成に移る予定である。 主として取り上げたテキストは、彼の主著である『菩提道灯論』およびその自注とされる『菩提道灯論細疏』であり、特にその中観思想を論じたセクションを中心に検討した。彼のラムリム思想の基盤が先行する中観論師の諸テキストにあり、中でもボーディバドラの影響が大きいことが解明された。中観思想の主要テーマである無自性性論証はカマラシーラに基づいているものの、彼の『バーヴァナークラマ』の引用は孫引きであることが明かとなり、その関係については慎重な調査を要するものである。今回の和訳の提示により、彼がチベツトにおいて中観論者の一人とされていく発端が解明された。 また、ディーパンカラシュリージュニャーナに帰されるスモール・テキストの中でも、中観思想を中心に論じた『中観説示』の思想内容を検討した。同じ著者の『中観説示・開宝篋論』との比較を行い、前者の主題が、三昧に入ることにより諸存在を無自性であると認識することにあることを解明した。また、プラジュニャーモークシャによる注釈書のテキスト校訂・和訳もあわせて完成させた。 チベットにおける『菩提道灯論』の受容に関しては、ローサン・ペルデン・テンジン・ニヤンタクによる注釈書を取り上げた。その和訳を完成し、彼が本論をどのように分析していたのかを提示した。 なお、彼の著作の著者性問題に関して、2002年12月13日にバンコクで開催された第13回国際仏教学会において「Some Remarks on the Small Texts Attributed to Dipamkarasrijnana」という報告をした。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 望月海慧: "Blo bzang dpal ldanによるBodhipathapradipaの注釈書について"身延山大学仏教学部紀要. 3. (2002)
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[Publications] 望月海慧: "DipamkarasrijnanaのMadhyamakopadesaについて"身延山大学仏教学部紀要. 3. (2002)
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[Publications] Kaie MOCHIZUKI: "The root verses cited in the Bodhimargadipapanjika"印度学仏教学研究. 51-2. 27-31 (2002)
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[Publications] Kaie MOCHIZUKI: "Some Remarks on the Small Texts Attributed to Dipamkarasrijnana"The XIIIth IABS Conference Abstracts. 164-165 (2002)
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[Publications] 望月海慧: "ディーパンカラシュリージュニャーナの『菩提道灯論細疏』和訳(6)"身延論叢. 8. (2003)
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[Publications] 望月海慧: "アティーシャのもう一つの『中観説示』"宗教研究. 76-4. (2003)