2003 Fiscal Year Annual Research Report
視覚的イメージのプラグマティクス:コミュニケーション行為論の観点から
Project/Area Number |
14510070
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岸 文和 同志社大学, 文学部, 教授 (30177810)
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Keywords | 視覚的イメージ / 運用論 / 言語行為論 / イメージ行為論 / コミュニケーション行為 / メディア機能 / 死絵 |
Research Abstract |
平成15年度は、「歌川国貞死絵考-浮世絵師の理想像について」(『美術フォーラム21』)を執筆することにおいて次のことを試みた。すなわち、本研究を遂行するに当たって原理的であると考えられる6つの問題を、「死絵」と呼ばれる具体例に則して、可能な限り歴史的地平にとどまりながら考察することである。 6つの問題とは次の通りである。第1に、視覚的イメージの記号論的特性(言語記号との差異)を明確にすること、第2に、視覚的イメージのテクスト性(コミュニケーション行為の単位の問題)を議論すること、第3に、視覚的イメージによるコミュニケーション・モデルを整備すること、第4に、コミュニケーション・モデルに基づいて、視覚的イメージが果たしうる5つのメディア機能-指示的・再現的機能/表出的・情動的機能/能動的・指令的機能/メタ・イメージ的機能/美的機能-を再検討すること、第5に、視覚的イメージのプラグマティクスの中心的課題である《規則》-意味論(Semantics)/統辞論(Syntax)/運用論(Pragmatics)-を階層化すること、そして第6に、視覚的イメージの運用論的な《規則》を記述する枠組みを、言語行為論との関係で精密化することである。 「死絵」において主として問題となるのは【報道する】という指示的機能と、【追悼する】という表出的機能である。現在、引き続き、「絵馬」と呼ばれる特殊なイメージの果たす機能-【祈願する】感謝する】-を考察しているが、現時点においては、この種の視覚的イメージの運用論を、サール(J.R.Searle)などの言語行為論モデルに依拠して考察することは十分可能であり、生産的であると考える。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 岸文和: "歌川国貞死絵考-浮世絵師の理想像について"美術フォーラム21. 第8号. 76-86 (2003)
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[Publications] Fumikazu Kishi: "The Laughter in 1794/95 : Sharaku's Kabuki Actor Prints as Media for Visual Communication""Japanese Aesthetics" (The 15th International Congress of Aesthetics). (予定). (2004)