2004 Fiscal Year Annual Research Report
視覚的イメージのプラグマティクス:コミュニケーション行為論の観点から
Project/Area Number |
14510070
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Research Institution | DOSHISHA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
岸 文和 同志社大学, 文学部, 教授 (30177810)
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Keywords | 視覚イメージ / プラグマティクス / 言語行為論 / 絵画行為論 / メディア機能 / 絵馬 / 広告 / 風景版画 |
Research Abstract |
視覚イメージは、《メディア》として、私たちにさまざまな情報を伝達する機能を担っている。本研究の課題は、日本の視覚文化(Visual Culture)に焦点を合わせて、多様な視覚的イメージが果たしてきたメディアとしての機能を、コミュニケーション行為論の観点から、すなわち、制作者はどのような視覚的イメージを用いて何を遂行しようとするのか、という観点から再検討することにある。本年度は、「北斎はいかにして神仏と交信したか--絵馬の絵画行為論--」(『美術フォーラム21』第10号)、「広告・宣伝の行為論--浮世絵で仙女香を販売する」(『文化学年報』第54輯)、「《風景》を描く理由--歌川広重「東海道五拾三次」を手がかりに--」(科学研究補助金(基盤研究(A)(1))研究成果報告書、『四大の感性論』、研究代表者・岩城見一)を執筆することによって、次の3つのことを行った。 1)「絵馬」において主として問題となるのは、祈願するという指令的機能と、感謝するという表出的機能である。北斎に帰されたことがある7種の絵馬について、その制作・奉納状況を検証することによって、絵馬が人間と神仏とを媒介するメディアである可能性を立証した。 2)「美人画」や「役者絵」に仙女香という白粉が描き添えられる場合、その視覚イメージは、受容者に対して、商品を購入して魅力的に変身することを提案(依頼/推薦)/約束することによって、受容者の欲望を喚起し、その結果として商品の購入へと向かわせることが可能であることを明らかにした。 3)「風景版画」については、従来、5つのメディア機能--指示的機能/表出的機能/指令的機能/メタ絵画的機能/美的機能--のうち、指示的/表出的/美的機能に優位性を与える試みが行われてきたが、なお理論的に残されている二つの可能性(指令的/メタ絵画的機能)に焦点を合わせる研究の必要性を指摘した。
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Research Products
(4 results)