2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヴィンチェンツオ・ダンティの『完全比例論第一書』の研究
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14510080
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
森 雅彦 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (90137612)
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Keywords | ヴィンチェンツオ・ダンディ / 完全比例論 / メディチ公国 / アレッサンドロ・アッローリ / 素描の規則 / フィレンツェ素描アカデミー / ファン・デ・バルベルデ / 人体構造論 |
Research Abstract |
メディチ公国において活躍したヴィンチエンツオ・ダンティの芸術論テクスト『完全比例論第一書』の美術史的意味を、公国の芸術環境との関わりの中で解明すべく、同時期のアレッサンドロ・アッローリの草稿『素描の規則』、ファン・デ・バルベルデの解剖学書その他の原典資料をマイクロフィルム、文献複写などを通して入手し分析を進めた。アッローリの『素描の規則は、1群(c.1-c.20)、2群(c.21-c.32)、3群(c.33-c.55)4群(c.56-c.65)、5群(c.66-79)、6群(c.80-c.93)の草稿群からなっていた。とくに注目に値すると思われたのは、ヴェザリウスや、ヴェザリウスの翻案作品ともいうべきバルベルデの解剖学書『人体構造論』への関心を暗示している箇所で(cc.3、25、39)、おそらくアッローリは、自身も会員であったフィレンツェ素描アカデミーの最初の医師アレッサンドロ・メンキの指導下に解剖学に知悉し、ヴェザリウスやバルベルデヘの知見の援用しつつ、その芸術論を洗練させていったのであろうとの結論を得た。他方、ダンティの『完全比例論』全15書の当初の構成もまた、II.骨、IV.頭部筋肉、V.肩胛骨、腕、手を動かす筋肉、VI.背中、胸、腹部を動かす筋肉、VII.腿、膝、脚を動かす筋肉など、バルベルデの『人体構造論』の内容を強く意識していると考えられた。従って、ダンティもまたメンキを始めとする同時代の知見に導かれて、おそらく同様の意図で『完全比例論』を著した可能性はきわめて高いと推測される。 またダンティの芸術論の理解にとって不可欠な、メディチ公国の芸術環境や、イタリア前近代の芸術理論、美術アカデミー全般への理解を深めるべく、フィリッポ・バルディヌッチその他について検討を加え、一定の成果を得た。
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Research Products
(2 results)