2002 Fiscal Year Annual Research Report
星曼荼羅の構図の決定要因と中尊の性格に関する研究-宗教と科学を繋ぐ美術の視点から-
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14510088
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
松浦 清 財団法人大阪市文化財協会, 学芸部・学芸第三係長 (70192333)
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Keywords | 星曼荼羅 / 北斗曼荼羅 / 熾盛光曼荼羅 / 熾盛光如来降臨図 / 星宿 / 天神信仰 |
Research Abstract |
研究課題について、平成14年度は主に、「熾盛光曼荼羅」の図像的な特色と星曼荼羅の制作背景という2つのテーマについて調査ならびに考察をおこなった。一つ目のテーマについては、高麗美術館が所蔵する朝鮮王朝時代の「熾盛光如来降臨図」を中心に調査と問題点の整理をおこなった。本図は敦煌莫高窟第61窟入口南側の壁画や、大英博物館、パリ国立図書館などが所蔵する「熾盛光仏ならびに五星図」の流れをくむもので、この図像は、わが国では東京芸術大学の「唐本北斗曼荼羅」や宝積院の「熾盛光曼荼羅」などのほか、奈良上之坊の『熾盛光仏頂大威徳消災吉祥陀羅尼経』の見返しなどにも描かれている。これらの「熾盛光曼荼羅」が法隆寺本や久米田寺本に代表される「北斗曼荼羅」とどのような関係にあるかは不明な点が多く、この解明が大きな課題であり、今回、高麗美術館本を例に図像的な特徴を比較検討すべく、細部の写真撮影をおこなった。星宿の尊名については既に姜素妍氏が論文「京都・高麗美術館蔵「熾盛光如来降臨図」考-道仏習合の観点から-」(『京都美学美術史学』創刊号)で紹介されているが、その星宿名の読みに一部誤りがあることが、今回の細部の観察により分かったことは大きな収穫であった。正しい読みを含む本図に関する報告は別途計画する。二つ目のテーマについては、従来、あまり言及されない天神信仰との関連性について調査と問題点の整理をおこなった。時代は下るが、室町時代以降に盛んに制作された天神画像のうち、〓頭冠のような独特の冠を被って直立する大阪天満宮の「束帯天神像」の類例として、防府天満宮の「三季天神像」のあることを確認できたことは大きな収穫であった。天神信仰が内包する天人相関説は星曼荼羅成立の基盤であることを考えると、両者の関係はさらに検討を要す。これらのテーマについては、平成15年度以降、継続的に調査ならびに考察をおこなう。
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