Research Abstract |
実験1 他個体との接触経験の違いによる隔離飼育効果の変容 本実験では,雄ICRマウスを対象に4種の飼育条件を設け,隔離飼育によって剥奪される経験の質を検討した.4週齢から5週間,(1)単独飼育(I群),あるいは2匹の雄を,(2)透明塩ビ製(P群)または(3)金網製の仕切りを隔てて(S群),(4)仕切りなしで(N群)同居させた.9週齢時に同週齢の集団雄と出会わせ,社会行動を評価した. 攻撃成分はI群とP群で多く,S群とN群ではほとんど出現しなかった.ところが,相手の接触に対する臆病反応,中でもすくみ反応は,I群,P群,S群で大きく増加し,N群ではほとんど出現しなかった.この結果は,攻撃反応と臆病反応では関与する剥奪経験の質が異なっている可能性を示唆した. 実験2 隔離飼育の行動的影響の個体差と脳内モノアミン 隔離飼育では攻撃的な個体も臆病な個体も出現する.雌との同居では攻撃的な個体は出現するが,臆病な個体はほとんど出現しない.本実験では,そうした行動の個体差と脳内モノアミンの関係について調べた.雄ICRマウスを,(1)4週齢から5週間単独飼育(I群),(2)7週齢から2週間雌と同居(C群),あるいは(3)離乳時から同腹仔で集団飼育(G群)し,9週齢時に遭遇テストを行い,社会行動を評価した.遭遇テストの4〜7日後,脳を摘出し,大脳皮質や海馬など7部位に分け,HPLC-ECDでモノアミンとその代謝産物を測定した. 遭遇テストの結果に基づき,I群を攻撃的な個体,臆病な個体,攻撃/臆病双方の反応が多い個体に分け,モノアミンと代謝産物の含量をC群やG群と比較した.G群に比べてI群では,モノアミン含量は総じて少なかったが,中脳ドーパミン系は亢進していた.また攻撃反応あるいは臆病反応のどちらかを支配的に示す隔離個体ではノルアドレナリンとセロトニン含量の減少が大きく,I群とC群の攻撃的な個体は神経化学的に異なっていた.
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