Research Abstract |
研究1 若齢期の社会的隔離が他個体遭遇時の雄マウスの脳活動に及ぼす影響 私たちは,c-Fos免疫組織反応を指標に,若齢期の社会的隔離が他個体遭遇時の雄マウスの脳活動を変化させることを見出した.本研究はこの知見の確証・拡張を目的とした.ICR雄マウスを被験体として,3週齢の離乳直後から6週間単独飼育する隔離群と同期間4匹1群で群飼する集団群の2群を設け,9週齢で1時間の社会的遭遇テストを行った.テストでは,金網製の小箱に相手個体を入れ,個体間のやり取りを最小限にした.小箱の中身によって4条件を設定した.(1)無傷の成体雄,(2)麻酔された成体雄,(3)使用済みの汚れたオガクズ,(4)内容物なし.テスト終了後,脳を灌流固定し摘出,嗅覚情報経路に加えて,扁桃体の投射部位について,c-Fos単独およびc-Fosと5-HTの二重染色による免疫組織学的検索を継続中である. 研究2 若齢期の飼育条件の違いが雄マウスの社会行動発達に与える影響 雄マウスにおける若齢期の社会的隔離が社会行動発達に大きな影響を及ぼすことはよく知られている.私たちは,2個体を金網で仕切って飼育すると社会行動発達への影響が変化することを見出した.本研究では,この知見を確証・拡張し,若齢期の社会的経験と社会行動発達との関連について探った.ICR雄マウスを4週齢から5週間,以下の4条件で飼育した.(1)透明塩ビ板で仕切り単独飼育,(2)2ミリ角の金網で仕切り単独飼育,(3)8ミリ角の金網で仕切り単独飼育,(4)2匹で集団飼育.9週齢で同期間群飼育された新奇な雄と出会わせ,社会行動を評価したところ,8ミリ角金網条件では攻撃が増加せず集団条件と差がなかったが,相手の接触に対してすくんだり,それを避けたりする臆病反応は増加したままであった.この結果は,攻撃と臆病反応では,その発達に関わる社会的経験が異なることを示唆した.
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