2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510122
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
太田 信夫 筑波大学, 心理学系, 教授 (80032168)
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Keywords | 記憶高進 / 忘却 / 生涯発達 / 過程分離手続き |
Research Abstract |
記憶高進(hypermnesia)の意識・無意識的成分の配分に関する実験心理学的検討を行った。記憶高進とは記憶すべき項目リストを提示し、その後連続的に複数回の記憶テストを行うと、その成績が徐々に向上することをいう。われわれのこれまでの研究から、記憶高進は、幼児や高齢者には認められず、児童(小学生)、青年(大学生)には認められるということがわかっている。また、無意識的記憶である潜在記憶の研究においては、発達の初期を除けば、生涯発達のどの段階でも、プライミング量には大きな変化はないことがわかっている。さらに、学習やテストの頻度は、プライミング量には影響しないこともわかっている。このような先行研究の諸結果から導かれる仮説としては、発達により顕在記憶(意識的記憶)が変化するのは、意識的成分の変化が起因しており、無意識的成分は、どのテスト状況においても一定であるといえる。 そこで本年度はまず大学生を対象に、記憶高進の実験パラダイムに基づく実験を行った。材料は、単語を用い、テストはその語幹完成テストであった。そして、過程分離手続き(process-dissociation procedure)により、意識的成分と無意識的成分の測定、算出を行った。3回の連続的テストの結果は、記憶高進が認められた。そして、仮説どおり、意識的成分はテストの回を重ねる毎に上昇し、無意識的成分は変化しなかった。すなわち、記憶高進でいわれる記憶成績の増加は、意識的成分の増加に帰することがわかった。
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