2002 Fiscal Year Annual Research Report
小学校教室場面における対話様式が学校文化獲得過程におよぼす影響
Project/Area Number |
14510126
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
田島 信元 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (90002295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 佳世子 文京学院大学, 人間学部, 教授 (70213395)
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Keywords | 学校(学級)文化 / 文化的道具 / 修得と専有 / 葛藤 / ことばの使い分け |
Research Abstract |
本研究は,社会文化的に組織されている文化的道具として,とくに学校環境における教師-生徒関係,同胞関係といった対人関係を媒介するコミュニケーションのための基本道具としてのことば遣いに注目,とりわけ,日本語のことば遣いの特徴である尊敬語・丁寧語・謙譲語を使い分けて,公式,非公式な相手場面に対して適応的な行動をとるといった,「ことばの使い分け」現象に焦点を当て,それが子どもの生活場面、とくに学校文化獲得過程でどのように機能しているかを吟味した。観察対象として,入学直後の小学校1年生のクラスを選択、教室行動を中心とする学校内における諸行動を、4,5月にわたり、2週間ごとに一度、特定の日を設定し、教室入室時より放課後に至る短期縦断的に生態学的観察を行った。このことで、小学1年生がどのような文化的道具に敏感に反応し、受容(習得あるいは抵抗(専有)を示すのかを分析した。その際、2月間の変化過程の分析に重点をおいた。とくに、先行研究における発見である教師-生徒間における「ことばの使い分け」と、やはり先行研究の発見である習得的学習・専有的学習との関係について吟味ができるよう、分析にあたってはプロトコル分析法が採用された。その結果、学校という文化・制度の中で適応していくために、児童は多様なルールや行動様式、知識体系などの文化的道具を獲得することが要請されていることが明らかにされ、それが児童の環境適応への問題を引き起こす原因の一つとなっていることが示唆された。しかも、文化的道具の獲得過程における教師、児童の対話の分析から、児童の学習に習得的側面と自分なりに再構築する専有的側面が立ち現れ、その間の統合の失敗に基づくことが示唆された。しかし,縦断的考察の結果,強制された習得は専有的発想との葛藤故に,新たな専有を生み,また,そうした専有は他者の専有的発想との葛藤故に,新たな習得に帰着するという状況が観察され,学習のダイナミズムが示唆された。
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[Publications] Nobumoto Tjima, Kayoko Uemura, Koichi Yamazaki, Yoshinori Wakao: "Mastery as sources and results of appropriation : A coincidental relation"Annual Report 2001-2002, Research and Clinical Center for Child Development, Faculty of Education. Hokkaido University. No.25(印刷中). (2003)
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[Publications] 田島信元: "ヒトと霊長類の行為・能力の比較の視点"心理学評論. 45・3. 395-398 (2002)
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[Publications] 田島 信元: "共同行為としての学習・発達:社会文化的アプローチの視座"金子書房. 274 (2003)