Research Abstract |
質問紙に対する(数的な)反応を,何らかの重みをつけて合成し,その結果として得られる尺度得点によって,被験者の間の心理学的な個人差を測定することは,心理学の研究・応用における極めて基本的な手筋である。 その際,合成の方法,具体的には重みを決定する原理は,頂目間の相互相関の高さ,すなわち項目反応の内的整合性に置かれる場合が多い。相互に相関の高い項目群は,共通した意味内容を持ち,そこからここの項目を超えた上位概念を抽出することができる。一方,テスト理論のモデルを受け入れるならば,相互相関の高い項目反応には,含まれる誤差成分が小さく,合成変量である尺度得点の信頼性が向上する。そうした尺度得点を実現する方法が主成分分析であると考えられる。 しかしながら,主成分分析による尺度構成には,いくつかの問題点がある。 (1)有限の標本から計算する限り,重みの標本変動は避けられないが,特に,単純構造への回転を伴う主成分分析において,誤差の影響は尺度の解釈に及ぶ。 (2)尺度外の変数との相互関係を重視する場合,内的整合性だけを重視した基準によっては,有効な成分が抽出できない場合がある。 (3)事前の項目選択にあたっては,過去の研究成果や,先見的な理論にもとづく情報が用いられているが,全くの経験的方法である主成分分析にはそうした情報を反映させることができない。 本研究では,同一質問項目の反復測定に基づく3相データを手がかりに,上記,(1)と(2)の問題の解決のヒントを得ることを目的とした。特に,3相主成分分析における条件モードの主成分数を変えることを通じて,得られる合成変量の性質が変化することを確認するとともに,それらを正準相関分析の結果と比較した。 さらに,(3)の間題についてのヒントを得るために,新たに開発された斜交直接プロクラステス法の性能を検討した。特に,通常のプロクラステス回転では解決できない微小な負荷行列の差異について,直接プロクラステス法が全体の当てはまりのよさを著しく下げることなく,事前の仮説に一致した結果を得ることができる場合があることが示された。
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