Research Abstract |
本研究の目的は,文脈の不適合性を自己修正する活動が学習に及ぼす効果を検討することであった。本年度は,偶発記憶手続を用いて,記銘語がうまく当てはまらない不適合文を修正するという符号化(自己修正精緻化)が,偶発記憶を高めるか否かを検討した。自己修正精緻化は,自己生成修正精緻化(以下,生成修正)と自己選択修正(以下,選択修正)精緻化に分けられ,それらに対応する条件が設けられた。生成修正条件では,被験者は,記銘語が適合するように,枠組み文中の1語に代わる語を自分で生成し,選択修正条件では,被験者に2つの語の内,うまく適合する語の方を選択させた。これら2つの自己修正条件に対する統制条件として,修正語をあらかじめ実験者によって呈示され,それの適切性を評定させる実験者呈示修正精緻化(以下,呈示修正)条件,及び,枠組み文中の空欄に適切語を生成させる自己生成精緻化(以下,自己生成)条件を設定した。 実験1では,生成修正,呈示修正及び自己生成条件間の比較を行ったが,偶発自由再生率に差はなく,実験2では,呈示修正条件を選択修正条件に変えて検討したが,ここでも条件間に差はなかった。枠組み文中の語を修正することは,記銘語の偶発記憶に効果がないことが示されたので,実験3及び4では,記銘語を枠組み文に適合する語に修正させる手続きを用いて,記銘語の偶発自由再生率における条件間の違いを検討した。 実験3では,生成修正>呈示修正という関係になり,修正語は被験者自身が生成した方が効果的であることを示した。また,実験4では,生成修正>選択修正という関係になり,修正語を選択させるよりも生成させる方が有効であることが示された。さらに,生成修正>自己生成という関係も見いだされ,適切語を生成するだけよりも,不適合な文脈を修正する語を生成する方が有効であることが明らかになった。
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