Research Abstract |
比較的対人的なトラブルが多く起こっているといわれた遊戯室と積み木室の2カ所で,それぞれ5日間,自由遊び時間の観察を行ったが,固定カメラによる記録では,対人的葛藤が生じていると判定される記録が少なく,さらに感情表出を伴うような対人的葛藤場面はほとんど見られなかった。当事者以外の幼児が,保育者を呼びにいった例も見られたが,いずれの場合も保育者の支援を待たずに,葛藤は解消されたように見えた。 物の取り合いのような対人的葛藤の場合,年長児は,お互いに自分の意図,したいことを言語的に主張する。その後どちらかがあきらめ,しばらくするともう一方も,興味をなくすという形で収束することが多い。また,片づけなどの際、他者が自分の意図と異なる片づけ方をした場合,「こうじゃなくて,こうで」などと,自分の意図を外言化し,他者に明示することで,対人的葛藤によるトラブルを避けていると考えられる例がいくつか見られた。さらに,年長児の場合,身体的接触等で転倒が生じた際にも,衝突した側が,衝突された側を気遣うそぶりは見せるものの,衝突が故意でないことや自分の正当性を主張するケースが見られた。これは,日頃保育者が,けんかなどの対人的トラブルが生じた際,関係する幼児それぞれの思いを仲介するような支援をしていることと関係すると考えられた。 年少児は声が大きく,「止めようよう」などの発言は,対人的葛藤に対する反応とも見られるが,状況や発言後の行動からは分類できないものであった。身体的接触や物の取り合いがこの年齢では多く見られると予想したが,年少児が遊戯室や積み木室を優先的に使う場面が少なく,ほとんど記録されていなかった。
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