2004 Fiscal Year Annual Research Report
書跡表現のもつ社会的な意義と役割に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
14510192
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
魚住 和晃 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (30112072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 務 神戸大学, 発達科学部, 教授 (30093173)
末本 誠 神戸大学, 発達科学部, 教授 (80162840)
萩 信雄 安田女子大学, 文学部, 助教授 (70341196)
信廣 友江 安田女子大学, 文学部, 助教授 (80198613)
萱 のり子 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (70314440)
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Keywords | 筆跡 / 書跡 / 鑑定 / 毛筆 / 墨 / 社会学 / 筆跡学 / 生理学 |
Research Abstract |
本研究は書跡表現がもつ意義と役割を社会的な側面から明らかにせんとしたものである。即ち、社会における人間の文字を書くことと自己の生命との結びつき、あるいは文字を書き、かつ見ることの人的効用の明確な位置づけとその方法論を展開せんとしたものである。 上記の観点に立って、魚住と多田は「小川本・智永真草千字文」(国宝)について、旧来これの真筆か搨模(透かし写し)かの判断が曖昧であった問題を、魚住の肉眼鑑定、さらに多田および廣田によって開発したコンピュータ画像解析により、真筆であることを確定した。これは、文系の観察力と理系の科学力との共同によって初めて為しえた研究法であり、このプロジェクト研究の意義が大いに発揮された成果でもある。 萩・信廣は山東省曲阜の漢魏碑刻陳列館に現存する「祝其卿墳壇刻石」とされる石刻文字について「況其卿墳壇刻石」とすべきであり、これを清の方朔だけが正しく判読していることを、旧拓本の考証と文献の精査による伝統的な金石学の手法によって確定した。 末本は主に北京老人大学の調査研究により、書文化を社会学的立場から、書学習の成人教育的意義について論じた。日本では書の活動がいわゆる流儀と書壇のしばりの強いものであるのに対し、中国の理念的なしくみに骨子を得ることによって比較し問題提起するものである。 萱は日本の女子が中国よりもはるかに早く書字力を獲得したことについて、古典的な存在である仮名の男手と女手の区分に着目し、これを従来のいわゆる書道史的観点から離れ据え直した。なお、萱はこの成果を2004年10月にアメリカのサウス・カロライナ大学で開催された第4回漢字書法教育国際会議でも口頭発表した。 青木および和田は書跡の知覚的分析を行い、墨のもつ独特な表現力である「にじみ」の作用について、それが膠の濃度に密接に関連するものであることを明らかにし、さらに適度の墨の香りが精神の安定に効果をもつことを、眼球運動の測定によって実証した。
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Research Products
(5 results)