2003 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄におけるハンセン病経験者の生活史と生活世界に関する実証的・理論的研究
Project/Area Number |
14510208
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
中村 文哉 山口県立大学, 社会福祉学部, 助教授 (90305798)
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Keywords | ハンセン病 / 沖縄 / 愛楽園 / 差別問題 / 社会調査 / ライフヒストリー / 「らい予防法」 / キリスト教 |
Research Abstract |
今年度の研究計画は、(1)A沖縄社会をテンニエスの近代化論から捉える試み、及び(1)Bゴッフマンの『アサイラム』の視点から収容施設としての「愛楽園」を捉える試み、(2)戦前から「本土復帰」までの沖縄におけるハンセン病の医療行政の解明、(3)文芸・芸能活動、信仰生活などを主題に社会-文化的世界としての「愛楽園」を捉える試み、(4)同園内の済井校の歴史を含め、愛楽園に出入りした「子供たち」の社会的現実を捉える試み、の4点を研究課題とした。 (1)Aは未着手に終わった。(1)Bは、収容施設としての「愛楽園」を『アサイラム』に倣い、抑圧機関と捉えるだけでなく、網野善彦のいう「アジール」と捉える必要もあることが確認できた。(2)は、「愛楽園」入園者の語りを同園の公刊物や新聞集成に当りながら読み解く構想であったが、『沖縄県議会史』に戦前の沖縄県議会でハンセン病問題の記載があることを発見した。昨年度は『沖縄県議会史』を入手したが、膨大な記録群であるため、昭和3年から4年の関連資料を掘り起こすに終わった。また当初、構想していた「戦前から本土復帰まで」という期間設定は、沖縄のめまぐるしい政治体制の変更を踏まえると無理があることが確認された。なお昨年度は「愛楽園」のある入園者の被差別体験を主題に、論文「あるハンセン病患家の食卓と沖縄社会」を上梓したが、これは昭和初期の沖縄におけるハンセン病差別の現実と差別の構造を照射する試みであり、課題(2)の成果の一つに位置づけられる。同論文を通して、西洋医学的な知識を欠如した当時のハンセン病の呼称や病因説の背景には、沖縄社会固有の迷信や習俗から成る混交した社会的認識があったことが確認できたが、それらの由来の解明という難しい課題が残された。(3)は理論的基礎として「アジール」の視点が必要であること、(4)は「愛楽園」の少年・少女舎の元寮母さんから聞き取りを行ったが、更なる調査が必要であることが判明した。
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Research Products
(1 results)