2002 Fiscal Year Annual Research Report
多元主義的存在論にもとづく批判的社会理論の基礎研究
Project/Area Number |
14510236
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐藤 春吉 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70247807)
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Keywords | 存在論 / 多元主義 / 自由 / 価値 / 行為 / 倫理 / K.マルクス / M.ヴェーバー |
Research Abstract |
本研究は、存在論(実在論)をベースにして、多元的な価値と存在の次元(存在位相)を行為と認識が媒介することによって社会諸関係が成立するという基礎理解にたち、社会諸関係の多元的構成の基礎理論の構築をめざすものである。また、このような基礎理論の理解のもとに、従来社会科学では欠けていた人間の行為が遭遇する倫理的な問題領域の社会的構成をとらえることが可能となるという見通しをもって研究を進めている。これによって、歴史法則主義によって歪曲されてきたマルクス的な社会批判と実践理論(労働ならびにコミュニケーション的政治的行為)において不在となっている行為における倫理的な判断や自由という問題を同時に扱う視野を開こうとするものである。そこで、本年度の研究は、多元主義的存在論の理論構築のための基礎的な研究を、特にアーチャー、パスカーらの実在論的な社会学(社会科学)の基礎理論の研究とヴェーバーの価値次元と存在次元、主観的認識次元の多元主義的構成の構造理解、アーレントの複数制による現れの世界と思考次元の多元性理解にもとづく公共空間論ならびに彼女の活動、仕事、労働などの行為論がもつ多元主義的倫理学につながる構想の検討を中心に行った。アーチャーらの実在論の構想についての研究はなお引き続き来年度の研究課題として継読する予定である。また、ヴェーバーの研究は、現在「M・ヴェーバーの世界観的前提と多元主義-その批判的継承をめざして」を執筆途上である。本年度は、特にアーレントの公共空間論の思想を検討し、彼女のマルクス批判の論理の批判的検討を行うとともに、現れの思想の実在論的性格とずれ、現れの空間における行為と思考活動との多元主義的理解、行為と言論の公共的世界における倫理問題の発生論などについて研究し、これまで手つかずだった分野についての新たな知見を得た。本年度は、「H.アーレントと公共空間の思想」を執筆し、2003年3月発行の本学人文科学研究所の叢書第16輯『新しい公共性-そのフロンティア』(有斐閣)の第1章として掲載した。なお、現在、ヴェーバーに関する上記論文の執筆作業をすすめつつ、ある出版企画に参加しマルクスとの関連でアーレントの行為論と現れの世界に関して主題的に論ずる論文を構想中である。
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Research Products
(1 results)