2002 Fiscal Year Annual Research Report
自己信頼とケアの道徳教育:エマソン.デュ-イ.カベルの道徳的完成主義の研究
Project/Area Number |
14510265
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 直子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (20334253)
|
Keywords | 道徳的完成主義 / デューイ / エマソン / カベル / 教育哲学 / 道徳教育 / 異文化間の哲学的対話 / プラグマティズム |
Research Abstract |
本研究は、日本、英国、米国などの先進民主主義諸国において、連帯と公共性の形成に貢献しうる「生き方としての民主主義」のための教育倫理を、教育哲学における異文化間対話を通じて提言することを目的とする。その指針を与える思想として、デューイ、エマソン、カベルら、アメリカの哲学を流れる「道徳的完成主義」の系譜の意義を探る。 この目的に即して、本年度は、1)研究成果の出版、2)海外の学会での発表、3)教育哲学の異文化間交流の三つの領域において、数々の実績を上げた。1)に関しては、まず、ニヒリズムの時代におけるデューイのプラグマティズムと悲劇の感覚、エマソンの道徳的完成主義思想の教育的意義を論じた論文が、イギリスの学術誌Journal of Philosophy of Educationに出版された。さらに、アメリカ哲学の学術誌、Transactions of the Charles S.Peirce Societyにおいて、現代社会における悲劇の感覚とプラグマティズムの問題について論じた論文が審査受理され、近々に出版予定である。2)に関しては、ノルウェイで開催された教育哲学者国際ネットワークの年次大会で、デューイの民主主義哲学と現代の国際理解教育について論じた論文を発表し、各国の教育哲学者とデューイの哲学や日本の教育問題について議論する機会を得た。3)については、イギリス、ベルギー、ニュージーランドの教育哲学者と共に、カベルの哲学の教育的意義を論ずる本を編集出版することとなった。さらに、日本においては、東京大学に客員教授として4ヶ月間招聘され、本課題研究の海外共同研究者でもある、Paul Standish氏や、短期間日本に招聘されたアメリカの教育哲学者、Nel Nodings氏らのシンポジウム通訳や、議論に数多く携わり、各国が共有する、生き方のレベルでの民主主義の問題を哲学的に話し合う必要性を認識した。さらに、Standish氏の著作、Beyond the Self : Wittgenstein, Heidegger and the limits of languageを翻訳することとなった。来年度は、市民教育や道徳教育の問題について本研究が持つ意義を一層明らかにしてゆく予定である。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Naoko Saito: "Education's Hope : Transcending the tragic with Emerson, Dewey and Cavell"Philosophy of Education. (未定). (2003)
-
[Publications] 齋藤直子・ポール・スタンディッシュ: "平等に先立つ論理:レヴィナス的道徳教育の再構築に向けて"現代思想. 第30巻 4号. 244-260 (2002)
-
[Publications] Naoko Saito: "Transcending the Tragic with Dewey and Emerson : Beyond the Morse-Bois vert debate"Transactions of the Charles S.Peirce Society. Spring 2003(未定). (2003)
-
[Publications] Naoko Saito: "Gift of Teaching(コメント論文)"Philosophy of Education. (未定). (2003)
-
[Publications] 齋藤直子: "教育の希望(コメント論文)"近代教育フォーラム. 第11巻. 27-36 (2002)
-
[Publications] Naoko Saito: "Pragmatism and the Tragic Sense : Dewey Growth in an Age of Nihilism"Journal of Philosophy of Education. 第36巻 2号. 247-263 (2002)
-
[Publications] Naoko Saito: "Michael Taylor ed., Collection of essays on pragmatism and Philosophy of education(本の一生を執筆)"Pragmatism, Tragedy and Hope : Deweyan Growth and Emersouian perfectionist education. (2003)