2003 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの意見表明権の発達思想的基礎付けとその法哲学的および法解釈学的意味
Project/Area Number |
14510269
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
世取山 洋介 新潟大学, 教育人間科学部, 助教授 (90262419)
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Keywords | 国連子どもの権利条約 / 意見表明権 / Vygotsky |
Research Abstract |
本年は、Vygotsky心理学に基づく子どもの意見表明権の心理学的正当化とその法的含意に関する論部を公表し、途中経過を報告することができた。この論文では、これまでの子どもの権利論が、服従かさもなくば服従かという二極論を構成したことの基礎に、FreudとPiagetが存在しながら、発達論的に両者は一致しており、2つの権利論の政治思想的な対立にもかかわらず、発達思想的には、成人年齢をどの段階で設定するのかの争いにとどまること、いずれも発達を非合理的な思考から合理的な思考への入れ替えと描くために意見表明権を正当化できないこと、そして、両者に対する批判を展開するVygotskyによってこそ正当化しやすいことを明らかにした。子どもの意見表明権を関係論的に捉えた場合の法的意義と、日本の子どものおかれている実態がこの観点からどのように評価されるのかについて、英文のレポートを作成し、国連子どもの権利委員会に提出すると同時に、委員との間で討論を行なうことができた。伝統的な国際人権理解(権利は国家と個人との間を流れるもの)からすれば、異常とも取られがちな関係論的把握に対して(権利は子どもとそれに直に接する大人との間に流れるもの)、予想通りの反発があったのと同時に、相当に積極的な受け止めもなされ、反応が真二つに分かれた。関係論的把握については今後も議論を継続するために、日本において国際共同研究会を開催することについて合意を得た。
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Research Products
(1 results)