2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510284
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
生田 周二 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (00212746)
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Keywords | 人権教育 / 地域性 / 偏見 / 差別 / エンパワメント / 文化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、人権教育の他の近接領域との相関、並びに諸外国における人権教育の理論と実践を踏まえ、日本的性格及びその発展の展望を考察することにある。今年度は、近接領域についてはアイヌ民族・文化教育との相関について、諸外国の人権教育についてはフィリピンの歴史と動向について検討した。 アイヌ民族・文化教育については、10月に北海道において「アイヌ民族・文化教育と人権教育に関する調査」を実施した。対象地域は、旭川市、標茶町、白糠町である。調査では、アイヌに関する学習が、アイヌ関係者の自立とエンパワメント、ならびに一般市民にとって視点の転換や多様性の尊重という意識形成につながっているのかどうかを問いかける意図を持っていた。 フィリピンの人権教育については、8月にマニラを中心に現地調査を行った。フィリピンの特徴は以下の点である。 1 政府機関による人権教育の推進:憲法、大統領令などの法令に基づくもの 2 人権教育教案の発行 3 各科目で統合的な授業の展開が模索されている:4Aアプローチなど 4 公務員の試験、学校での人権教育の試験など評価の対象となっている 5 人権委員会の設置による人権侵害行為の問題の受付と勧告:地方事務局とバランガイ(最小行政単位)レベル 6 民衆組織の中で、パラリーガル(裸足の法律家)といわれるボランティアが組織されている 以上、今年度は、日本国内の問題と、日本と並ぶアジアにおける人権教育推進国であるフィリピンを中心に比較検討したが、来年度以降は、ドイツの異文化間教育とEU並びに国連の人権に関わる教育政策、国内では沖縄の平和教育を取材する。そのことによって、研究目的である、日本国内の地域による人権教育の重点の異同、欧米・アジア諸国の人権教育との比較という内外の相対化のもとに、研究を実施する。
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