2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510318
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
大庭 宣尊 広島修道大学, 人文学部, 教授 (70160611)
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Keywords | 差別 / 教育 / 知識 / 日本 / オーストラリア |
Research Abstract |
「差別はいけない」という規範的知識が受容され一定の力を持つ現代社会においては、"差別の正当化"は集中的な検討を要する大きなテーマである。「差別はいけない」という規範の存在を認知した現代人は、差別を行なう(ないしは、行なってしまった)場合、その規範からの逸脱を何らかのかたちで正当化せねばならないのだが、その正当化がまんまと成立するかどうかは、そのまま差別問題学習を焦点にすえる人権教育の成果が問われる問題として立ち上がってくる。 本研究では、「(1).差別とは、あるカテゴリーに属するとされる社会成員に見いだした差異の恣意的な強調に基づいて構成される価値の引き下げ-排除であり、それが成立するためには、非排除カテゴリーの者になじみやすい知識の有効な動員がなされねばならない。(1)-a.逆に言えば、排除への同意を得るため、また排除をためらう者の退路を断つためとあらば、いかなる日常知も動員される。(2).その意味において差別の正当化とは価値の語彙の織りなす世界とは異なり、動機の語彙をめぐる"納得の構造"である」という仮説を設定した。本年度は、来年度に予定している本調査に向け、部落差別・民族差別・女性差別・障害者差別などにおいて見られる差別の正当化のありよう、および日本・オーストラリア社会における差別の正当化のありようを、「差別事象」としてクレイムを申し立てられたことがらに焦点をあてながら、集中的にデータを収集し、上の仮説の検証に努めるとともに、本調査における調査項目のための準備を開始した。
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