2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510332
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 洋 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (50262093)
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Keywords | 韓国・朝鮮 / 在地エリート・地方有志 / 吏族・郷吏 / 士族・両班 / 歴史人類学 / 社会人類学 / 植民地近代性 / 伝統 |
Research Abstract |
本研究の目的は,近現代韓国社会における在地エリートが,近代化,植民地支配の介入,ならびに産業化・都市化の過程で,自らの社会組織と文化伝統をどのように再編成し,さらには地方社会の公的な領域にかかわる諸活動をどのように展開してきたのかを,社会人類学的な観点から究明することにある。本年度は最終年度での総括に向けて,開化期から植民地期にかけての吏族の身分集団の再編成と伝統の形成,植民地期から解放後80年代に至る地域開発に関与した在地有力者の系譜,ならびに朝鮮時代後期から現代に至る公的な儀礼の再編成とそれに関わる諸主体の社会的実践や空間/歴史認識について,それぞれ論考をまとめた(研究発表参照)。いずれも韓国南西部南原地域に即した事例研究であるが,その結果として,以下のような成果と展望を得ることができた。(1)南原地域の吏族集団の場合,19世紀後半から20世紀前半にかけて身分集団を枠組とした伝統の形成が進行し,そこには士族とは異なる正当性・威信の追求という動機付けを見て取ることができた。 (2)このような身分伝統の形成・再編成と併行して,1920年代以降は地域開発が進み,それに関与する媒介者・調整者的な主体のなかから身分伝統の再生産を担う者が生み出されるようになった。 (3)開発に伴う景観の変容や政治・経済的な近代化のなかで,既存の儀礼施設やモニュメントをめぐる活動のあり方に顕著な変化が見られた。(4)以上の成果を他地域の事例と比較することにより,近代性と在地エリートの再生産の過程を,同質性(同時代性)と差異(段階性)を含む多様かつ複合的な実体として捉えることが可能になると思われる。この他,本年度の研究活動として,この成果と展望を確認するために,南原地域で2週間の現地調査を行なった。
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