2002 Fiscal Year Annual Research Report
予想される農家世帯の消失プロセスと「家」継承イデオロギーの変化
Project/Area Number |
14510333
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
波平 恵美子 お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (00109216)
|
Keywords | 農家世帯 / 「家」イデオロギー / 地域共同体 / 土地改良区 |
Research Abstract |
研究計画の1年度目において以下のの知見を得た。 予定していた3カ所の調査対象の村落のうち、2カ所については全戸調査がほぼ完了した。1カ所については、予備的調査が完了した。その結果おおよそ次のことが明らかになった。 1.福島県会津地方の大規模水田耕作地帯、山口県瀬戸内地方の中規模水田耕作地帯、新潟県東蒲原郡の山村地帯という農業経営の規模においても経営内容においても、また都市への接近の程度においても、さらには気候風土においても大きく異なる3カ所の農村において、いずれも農業後継者の確保においては、困難な状況にあった。 2.後継者確保が困難であることの要因は、それぞれにおいて比率は異なるものの、いずれも次のことが関わっていた。 a.農業生産品の出荷によって得られる収入に対して、農業機械が高価であるために、どの品目を栽培しても必ず赤字になることから、農業の将来について、わずか10年後のことさえも不安定であると考えており、自分の子どもを後継者とすることに積極的ではない。 b.農地、特に水田の売買は行われていないものの、農地の価格が水田でさえ、1980年ごろの5分の1から3分の1という値段が人々の間で流布しており、水田を保有し続けることの動機が弱くなっていて、農地が、「家産」であるという認識を持たなくなっている。 c.農業基本法の改正にみられるように、戦後の農地改革以降日本の農業の形を作っていた基本的な制度が変革していくことについて、現実の姿として、各農家が理解し始めた。 3.「家」の観念が、現在の世帯主の子どもの世代においては、ほぼ完全に消失している。ただし、親の扶養義務についての認識は強い。 4.「家」観念の消失は明白である一方、自分たちの村落共同体の結束や、共同体としての機能を保持しようとする傾向は1980年代とそれほぼ変化していない。
|