2004 Fiscal Year Annual Research Report
帝国における植民地と本国-境界における統治テクノロジーの形成をめぐる歴史人類学的研究
Project/Area Number |
14510334
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
永渕 康之 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30208045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 勇夫 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20179419)
平野 千果子 武蔵大学, 人文学部, 教授 (00319419)
西川 麦子 甲南大学, 文学部, 教授 (20251910)
石川 登 京都大学, 東南アジア研究所, 助教授 (50273503)
吉田 信 福岡女子大学, 文学部, 助教授 (60314457)
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Keywords | 帝国 / 植民地 / 統治 / 移民労働者 / 国籍 / 人権 / 宗教 / 道徳 |
Research Abstract |
帝国は一方では人、物、思想の移動を劇的に加速させたにもかかわらず、他方では統治の要請において整合的な分類や領域設定の必要性が高まった。動的な流動と静的な管理への要請に帝国は引き裂かれていたのであり、その狭間に位置するものがここで言う境界という問題である。この課題について本研究は次の3点の解明を目指している。 1)領域の境界と移動。現在の国民国家の国境に発展した帝国における領域的境界は、移動を管理しようとする試行錯誤から固定化されてきたものである。貿易、移民労働者、国籍などに関する国際的な合意と管理システムが成立するとともに、宗主国間、植民地間の交通関係が樹立された。 2)文化の境界と人間分類。植民地都市やプランテーションは、浮浪者、混血、文化的カテゴリーからの逸脱者を生み出した。宗主国の言語と思想を身につけた「原住民」、現地の文化に「下った」白人、管理からはみ出した浮浪者は、ともに植民地統治の文化的基盤を揺るがす根本的な問題であった。そうした問題を検討するなかで、統治の文化的正統性や民族をめぐる管理機構が明確になった。 3)管理の境界と倫理世界。社会福祉や教育など広く倫理に関わる領域は原住民管理の重要な分野であったにもかかわらず、宗教に代表される現地社会のシステムに倫理世界の管理を帝国は依存せざるをえなかった。倫理世界は管理の限界が露呈する境界領域であり、イスラム、ヒンドゥー、仏教といった宗教や各地域の信仰がキリスト教的倫理観、進歩や道徳をめぐる思想と衝突するなかで、福祉と教育に関する具体的制度が組織された。 具体的な活動としては、研究代表者および分担者の従来の調査研究経験を生かして担当地域を分割し(イギリス=西川・石川、フランス=高木・平野、オランダ=永渕・吉田)、そのうえで1)2回の研究会の実施、2)資料の収集、3)海外の調査機関における研究(本年度は研究分担者西川)、を行った。
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Research Products
(4 results)