2002 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の地方政治・地域自治と環日本海諸地域との比較史的研究
Project/Area Number |
14510351
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
芳井 研一 新潟大学, 人文学部, 教授 (90092634)
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Keywords | 近代日本 / 地域社会 / 地方政治 / 地域自治 / 環日本海地域 / 裏日本 / 比較史 |
Research Abstract |
新潟県下の在地資料、国立国会図書館や外務省外交史料館等の所蔵資料を収集することに精力を注ぎつつ、本年度は地域社会における漁業をめぐる相剋に焦点をあてて次のような内容の研究成果を公表した。 1、電力産業の勃興にともなう発電所と堰堤の築造によって、それまで沿岸住民の主要な蛋白源であり漁労の対象であった鮭鱒が激減した。漁業組合など地域社会の住民が各地で反対の声をあげたものの、電力の供給という大義名分が優先し、人工孵化場や魚道を設置するなどの対症療法的な対応がなされた過程をたどり、水利権の再定義の必要、鮭鱒が遡上できる河川の回復を展望した。 2、近代日本の北洋漁業をめぐる問題を、環日本海地域住民の視点に立って検討した。日露漁業条約体制のもとで「裏日本」地域を中心とする漁業者が樺太・沿海州・カムチャッカの鮭鱒鰊漁に大挙して進出したが、その過程でロシア極東の地域住民は漁業資源が枯渇することへの危機感を強め、中央政府に陳情を繰り返した。「裏日本」の北洋漁業者もロシア側の様々の漁業規制への反発を強め、政府への圧力活動を積み重ねた。この住民相互の漁業や地域発展をめぐる利害への思惑が、その後の日露漁業交渉の背景として流れていたことを摘出した。枯渇化する漁業資源をめぐって地域住民・漁業者・国家等が織りなす相剋史を丹念にたどることにより、北洋漁業をめぐって従来視野の外に置かれていた問題を明かにした。
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Research Products
(2 results)