2003 Fiscal Year Annual Research Report
19-20世紀日本における記念碑文化の比較史的研究
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14510353
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
羽賀 祥二 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30127120)
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Keywords | 記念碑 / 史蹟 / 文化財 / 歴史意識 / ナショナリズム |
Research Abstract |
今年度は次の調査・研究を実施した。(ア)本研究では19世紀から20世紀日本全国において広範に建立された記念碑の多様性と、その建立と背景、その歴史的意義を解明することを目的としているが、建立されたさまざまな種類の記念碑の実態調査を愛知県をフィールドとしておこなった。戦前以来の市町村史・記念碑調査書などを網羅的に調べ、愛知県内記念碑データベースの作成を昨年度からの計画的事業として引き続きおこなった。(イ)本研究では、日本の記念碑文化を他の社会・民族の記念碑・石造物と比較研究することを目的としている。今年度は韓国(安東市・慶州市・釜山市)において石碑・石造物の調査を実施し、とくに第二次大戦後に建立された史蹟記念碑・戦争記念碑の調査を実施し、あわせて史蹟保存の現状に関して多くの資料を得ることができた。とくに1960年代の朴政権期に李朝時代の歴史遺産の見直し・保存事業が行われた点を確認することができ、工業化と歴史遺産に関する新たな知見を得た。(ウ)19世紀〜昭和戦前期の南朝遺蹟の顕彰運動に関して、隠岐島・鳥取県西部地域・京都市・三重県において調査を実施し、後醍醐天皇・南朝忠臣に関する記念碑を調査し、今後の南朝関係遺蹟と記念碑に関する全国的調査の地歩を築くことができた。南朝関係の遺蹟・記念碑は近代日本の歴史意識・歴史学の形成・歴史教育など広範な問題を含んで、保存・顕彰されてきたことを明らかにすることができた。(エ)19世紀〜20世紀日本の記念碑文化を理論的に位置づける作業の一環として、日本近代の「伝統」認識について検討を加えた。「伝統」という概念の形成とその背後にある歴史意識について成果を得ることができた。
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Research Products
(2 results)