2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510356
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
阿部 安成 滋賀大学, 経済学部, 助教授 (10272775)
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Keywords | ハンセン病 / 隔離 / 社会史 |
Research Abstract |
平成14年度は、東京都東村山市の多磨全生園、鹿児島県名瀬市の奄美和光園、沖縄県名護市の沖縄愛楽園、沖縄県平良市の宮古南静園を調査した。 多磨全生園には、ハンセン病をめぐる史資料を所蔵する高松宮記念ハンセン病資料館があり、そこで園内で作製された入園者の手記などを閲覧・複写した。奄美和光園では、入園者の自治会が作製した機関誌である『和光』と、和光園の所在地の郷土史である『大熊誌』などの閲覧と複写をおこない、入園者からの聞き取りもおこなった。また自治会が所蔵している他療養所内自治会史料のなかから、沖縄愛楽園入園者自治会が作製した機関誌である『愛楽』を閲覧・複写した。あわせて、和光園の所在地である名護市にある鹿児島県立図書館奄美分館において、和光園にかかわるアメリカ軍政史料の調査をおこなった。沖縄愛楽園では、入園者の自治会が作製した機関誌である『愛楽』と、入園者が作製した文芸誌や手記を閲覧・複写し、入園者からの聞き取りもおこなった。また園内にある史蹟や記念碑の調査をした。宮古南静園では、入園者からの聞き取りをおこない、また園近辺にある第二次世界大戦時のハンセン病者にかかわる史蹟を調査した。あわせて、南静園の所在地である平良市にある沖縄県立図書館宮古分館と平良市立図書館において、南静園にかかわる史料を調査し、宮古で発行された新聞を閲覧した。 4か所のハンセン病にかかわる国立療養所を調査した結果、入園者が詩や短歌や小説や随想といった文芸を創作することにおいて、園内で自己を主体化する諸相を確認した。沖縄愛楽園では入園者が療養施設の創設者を顕彰する記念碑を建立することにおいて、迫害と差別の歴史を顕在化させる様相を確認した。宮古南静園では第二次世界大戦下におけるハンセン病者の体験を聴取し、日本軍とハンセン病のかかわりや入園者が園外に避難した実相を確認した。また聞き取りにより、奄美・沖縄・宮古の療養所が本土と異なる歴史をたどった軌跡を確認した。 今年度は調査の成果を論文として発表することができなかったが、調査の成果として平成15年2月15日に、(社)部落解放・人権研究所内の研究会で研究報告をおこなった。
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