2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510356
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
阿部 安成 滋賀大学, 経済学部, 助教授 (10272775)
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Keywords | ハンセン病 / 隔離 / 社会史 |
Research Abstract |
平成15年度は、東京都千代田区の厚生労働省図書館、東京都東村山市の国立療養所多磨全生園、東京都国立市の一橋大学附属図書館、鹿児島県鹿屋市の国立療養所星塚敬愛園、熊本県菊池郡の国立療養所菊池恵楓園、香川県木田郡の国立療養所大島青松園、岡山県邑久郡の国立療養所邑久光明園・長島愛生園、を調査した。 多磨全生園では、園内で所蔵されている他の国立療養所の刊行物について、その所在調査と必要な史資料の閲覧・複写をおこなった。また、同園内の高松宮記念ハンセン病資料館で、ハンセン病の歴史の展示方法について調査をおこなった。全国の療養所で刊行・所蔵されている文芸誌や機関誌については、その全国規模のデータベース作製の必要性を痛感した。 厚生労働省図書館では、第二次世界大戦後のらい予防法制定過程にかかわる資料や、現在の感染症をめぐるWHOや日本政府の対応についての資料調査をおこなった。 一橋大学附属図書館では、幕末の開国・開港以降の伝染病流行をめぐる社会史・民衆史にかかわる文献の調査と閲覧をおこなった。 星塚敬愛園、菊池恵楓園、大島青松園、邑久光明園、長島愛生園では、それぞれで、園内で刊行された文芸誌や機関誌の調査・閲覧・複写と、園内に建立された記念碑や史蹟の調査をおこなった。 上記の調査により、園内に設置された監禁室や監房の痕跡や復元の状況を把握し、また聞き取りにより第二次世界大戦下での防空壕設置作業の様相を確認した。星塚敬愛園と大島青松園で保存されている園内の刊行物からは、戦前の癩予防法施行下における、園内外の交流について確認することができた。これらの調査結果により、第二次世界大戦前の社会におけるハンセン病者の隔離の実相と、園内における懲戒検束実施について考察する展望が開けた。
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