2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510376
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Research Institution | Akita National College of Technology |
Principal Investigator |
脇野 博 秋田工業高等専門学校, 人文科学系, 教授 (80220846)
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Keywords | 幕藩体制社会 / 職能集団 / 身分共同体 / 職人 / 技術 / 徒弟 |
Research Abstract |
身分制社会である幕藩体制社会において、職能集団である身分共同体で技術がどのようにして行使、習得、改良、保存、伝承されたのかを考察し、身分制という社会的関係のもとでの技術の特質を明らかにするために、主として手工業職人を中心として、近世・近代期の資料(文献・史料・図絵)を調査・収集し、目録と資料データベースを作成する作業を行った。この作業を通じて得られた知見は、以下のようである。 近代以降、徒弟制の代替として徒弟学校が成立し、職人技術の客観的知識化が意図的に進められたことから、近世幕藩体制社会においては技術はいまだ客観的知識化しておらず、職人及びその職能集団と不可分なものとして存在していたと考えられる。明治初頭に鋳物師等の職人が古来からの由緒や既得権を根拠にするなどして、職能集団の存続を主張したことについては、従来営業独占の維持を目的にした排他的行為で、特権維持のためであったと主として評価されてきた。しかし、技術の客観的知識化が実現していない段階においては、職能集団が解体した場合、その集団に属する職人は技術から切り離されるのであり、こうした点から職能集団維持の要求は職人が自らの技術を保持するための行為であったとも理解できるのである。幕藩体制社会においては、職能集団内におげる技術の客観的知識化はほとんど進まず、またそれゆえに職能集団が維持され続けたと考えられる。身分制と深く結びついていたために技術の客観的知識化が進まず、いわゆる近代的な技術に転換する契機を持ち得なかった点に、幕藩体制社会における技術の特質を見ることができる。
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