2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510377
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Research Institution | Toyota College of Technology |
Principal Investigator |
幸田 正孝 豊田工業高等専門学校, 一般学科, 教授 (30043714)
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Keywords | 洋学 / 宇田川榕菴 / 宇田川興斎 / 伊藤圭介 / 吉雄常庵 / 野村立栄 / 蕃書調所 / 写真術 |
Research Abstract |
江戸の津山藩邸にあった宇田川玄随(槐園)・玄真(榛斎)・榕菴・興斎の4代にわたる宇田川塾は,江戸幕府の手になる西洋百科事典『厚生新編』の翻訳の主な担当者となっただけではなく,日本における西洋内科学・薬物学のパイオニアとなり,化学や植物学の開拓者となった。これは他の蘭学の創始者,前野良沢や杉田玄白,それに続く大槻玄沢には見られない業績である。また,洋学の積極的な普及と後継者の育成を取り上げてみると,玄真(榛斎)の弟子だけを見ても,箕作阮甫・坪井信道・緒方洪庵といった人物をたちどころに挙げることができる。そして,幕末から明治にかけて活躍した4代目の興斎ともなると,英字の導入にも努め,写真術や電信機などの科学的な知識を広く人々に伝える啓蒙家としても活躍している。 その宇田川家について,ア 伝記的な研究 イ 稿本や刊本の所在調査 ウ 稿本や刊本の書誌的研究 などを行い,宇田川家を通して,洋学の開拓と需要の具体的な状況を明らかにするものである。 平成14年度は,とりわけ最もよく知られた宇田川榕菴についての伝記的な史料を重点的に収集し,「宇田川榕菴の履歴」を発表した。また,玄真(榛斎)の蘭和活用辞典『けんろく韻府』の研究や,玄真の弟子で・榕菴の先生である吉雄常庵,吉雄常庵と榕菴の共通の弟子である伊藤圭介,尾張の蘭学の源流とされる野村立栄らをとりあげて,「野村立栄・羽栗三圭(吉雄常庵)・冨永晋二」を発表した(なお共著者の佐光は,冨永の阿波藩での資料調査を担当した)。 平成15年度は,榕菴の養子の興斎を取り上げ,早稲田大学所蔵の勤書も採録した。また,前年度に続いて,榕菴の弟子・伊藤圭介が蘭学へ入門した状況を検討した。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 幸田正孝: "尾張・伊藤圭介著・男譲次『日本植物図説』について"(伊藤圭介日記第9集)錦吉翁日記. 第9巻. 203-217 (2002)
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[Publications] 幸田正孝: "宇田川榕菴の履歴-「江戸日記」「勤書」などから-"豊田工業高等専門学校研究紀要. 第35巻. 111-226 (2002)
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[Publications] 幸田正孝, 佐光昭二: "野村立栄・羽栗三圭(吉雄常庵)・冨永晋二-江戸の蘭学徒-"豊田工業高等専門学校研究紀要. 第35巻. 227-298 (2002)
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[Publications] 幸田正孝: "伊藤圭介の蘭学事始"生誕二百年記念・伊藤圭介の生涯とその業績. 110-113 (2003)
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[Publications] 幸田正孝: "宇田川興斎の『勤書』(早稲田大学所蔵)"豊田工業高等専門学校研究紀要. 第36巻. 181-186 (2003)