2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510379
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
井原 今朝男 国立歴史民俗博物館, 研究部, 教授 (20311136)
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Keywords | 債務史 / 助成 / 用十八度之礼書 / 籠屋 / 切符 / 請取状 / 請負契約 / 決算システム |
Research Abstract |
1,中世地方寺院関係史料の調査によって、東国荘園の東大社において、応永23年(1416)「惣荘内郷々助成合力」が行われており、寺社のために郷がお互いに銭貨を助成しあい、相互の債務関係を結んで大きな事業を主体的に実施していたことがあきらかになった。中世では郷が債務契約の主体者になりえたのである。また、天正13(1585)信州伊那郡乾福寺では参詣人の集団的宿泊施設の「籠屋」があり、「落所」=落書きが禁止された。善光寺でも永禄11年(1568)に「四十八度之礼書」が堂妙坊・堂照坊によって発行され、その「礼銭」が「経衆」「中衆」の取得権になり、反対に彼らが「仏前之灯明」を用意すべきことが義務づけられていたことが判明した。東国寺社では16世紀ごろから、集団参詣や巡礼者が激増し、参詣者による賽銭・礼銭などが経済的な得分として比重を増加させていたことが判明した。礼銭の取得は灯明維持という業務のための請負契約であったことが判明した。これまでの研究では、礼銭の取得を貨幣経済の発展として評価するだけであった。しかし、現実はむしろ、債務関係や請負関係によって灯明の維持を図る寺院システムとして再検討する必要があるといえよう。 2,東大寺未成巻文書の詳細調査によって、切符や請取状が大量に連券にされて、一括して支払いや下行が行われた後、抹消符が加えられ、さらに勘合をして花押と支払いが済んだことの書き込みがなされたことが判明した。これを「勘合裏書」と呼ぶことにした。こうした行為は寺院内における物資や貨幣の支出方法と決算システムの一環と考えられ、その全体像の解明が課題になってきた。ひきつづき、詳細調査が必要になった。 3,鎌倉遺文からの債務関係史料の抽出とデータ入力は今年度で終了することができた。データーベース作りのために、キーワードの選定をはじめ、95項目についての史料リストが容易に検索できるようになった。
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Research Products
(7 results)