2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510380
|
Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
近藤 正子 (金山 正子) (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (20311491)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小村 真理 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10261215)
井上 美知子 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (70223279)
|
Keywords | 近現代図面 / 劣化損傷状態調査 / 記録素材 / 歴史資料 / 水性染料 / 複写素材 / 劣化促進試験 / 保存強化処理 |
Research Abstract |
当研究は、明治以降の近現代図面の製作過程を明らかにするとともに、その材質的な特質および劣化損傷の現状を把握し、それらの劣化原因と保存処理方法に検討を加えようとするものである。日本に残存している明治期の図面類は、それまでの和紙と顔料で描かれた江戸時代の膠絵のものとは質的にも内容的にも異なり、新しい図面用紙、新しい記録素材、そして新しい表現手法が取り入れられてくる。その多くは、政府に招聘されたお雇い外国人技術者たちが、祖国から取り寄せた材料を用いて技術指導したものに始まる。それらが、やがて国産の特殊用紙、水性染料、合成顔料などの開発および実用に変遷していく。この時期の図面類などをはじめとする歴史資料には、図画面の記録素材そのものに顕著な変色や変質などの劣化症状のみられるものも多く、保存処理の急がれるものが多いにもかかわらず、その対処が遅れている一因は、それらの劣化損傷状況の把握・素材分析および劣化原因の究明が進んでいないからでもある。 当研究においては、幕末から明治以降の彩色絵図面の劣化状態の調査を行い、官能試験・測色・表面観察などの新しい手法を取り入れた状態調査法の確立を試み、また、その劣化原因を究明した。さらに、調査過程において確認されたことは、彩色図面だけでなく、一般の図面類や文書の一部に使われている水性顔料やインク類、アルカリ現像液を使って定着させる化学的な複写素材にも、褪色や色変色などの劣化が顕著なことである。そこで、これらの図面用紙などを劣化促進させ、変褪色・強度の低下などの測定を行い、紙質の違いによる劣化症状の差や記録素材の安定性の比較を行った。それらの結果を考察して、現存する多量の明治以降の図面類の保存において、保存処理技法の適否、優先順位などにも検討を加えた。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] 金山 正子: "紙資料を保存する-状態調査法と保存管理プログラムの策定"元興寺文化財研究所研究報告2001. 110-120 (2002)
-
[Publications] 金山 正子: "保存対策マニュアル-時代別劣化症状の特徴と保存対策"アーカイブズ(国立公文書館紀要). 9. 57-64 (2002)
-
[Publications] 金山 正子: "保存対策マニュアル-支持体別劣化症状の特徴と保存対策"アーカイブズ(国立公文書館紀要). 10. 34-41 (2002)
-
[Publications] 金山 正子: "保存対策マニュアル-記録素材別劣化症状の特徴と保存対策"アーカイブズ(国立公文書館紀要). 11. 44-60 (2003)
-
[Publications] 金山 正子: "修復技術の新たな展開-修復技術の実際"アーカイブズの科学(国文学研究資料館史料館編). 410-422 (2003)