2002 Fiscal Year Annual Research Report
『海東諸国紀』研究-「本の歴史」から見る東アジア対外関係史
Project/Area Number |
14510390
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
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Keywords | 海東諸国紀 / 写本 / 申叔舟 / 朝鮮前期 / 地図 / 朝日関係 / 日朝関係 / 江戸時代 |
Research Abstract |
『海東諸国紀』という朝鮮前期時代に撰修された本の歴史をテーマとした本研究は、2002年度は国内と海外での史料蒐集や史料調査を実施し、また、学会での発表も行い、研究はほぼ順調に進展した。 特に、韓国では、7月中に10日間、ソウル国立大学校、中央国立図書館、国史編纂委員会、韓国精神文化研究院で、写本と史料を入手し、所蔵史料を調査をした。日本では、京都大学、東京大学、宮内庁、東洋文庫、内閣文庫などの所蔵本を入手した。現在、27冊の写本が蒐集された。写本、史料の数が増えてくるにつれ、研究に新たな視点を与えることと期待している。 今年度の研究成果のひとつとして、『海東諸国記』の写本を三つの系統に分けることがあげられる。(雑誌論文の1。を参考されたい。)それぞれの系統は異字、按文、奥書などによって分けられるが、写本の中の地図に書かれた地名に一貫性が欠如するという例も見られた。地図の相違や書き込まれた注釈を分析することにより、より詳しく系統内の分系を掘り出す可能性が高まっている。 関連して、『海東諸国紀』の中の地図は朝鮮における後代の地図学、特に民間で作られた地図帳の中の日本図、琉球図と海上東北アジア図に大きな影響を与えると同時に、官選地図帳から消えて行く場合もあった。このような朝鮮後期の地図帳の傾向と、『海東諸国紀』の中の地図が17世紀からどのように利用されたかは、朝鮮の地図史を考える上で、これからの重要な研究課題のひとつである。 今後の課題は、奥書や跋文の筆者がどのように朝鮮に興味を持つようになったのか、『海東諸国紀』の写本がどのように、日本、朝鮮で利用されたのか、またその利用の変遷を明らかにすることである。加えて、17世紀から朝鮮では『海東諸国紀』の重要度が落ちるが、その理由も検討したいと考えている。
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Research Products
(1 results)