2004 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半のロシアの絵入り新聞にみる東アジア表象にかんする基礎的研究
Project/Area Number |
14510403
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
下里 俊行 上越教育大学, 学校教育学部, 助教授 (80262393)
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Keywords | 19世紀後半 / ロシア / 絵入り新聞 / 東アジア / 表象 / スペンサー |
Research Abstract |
19世紀後半のロシアの絵入り新聞の資料状況について前年度と同様に、ヘルシンキ大学附属図書館およびストックホルム大学附属図書館で調査をおこなった。また前年度に明らかにした方法論的視点にもとづいて『イリュストラツィヤ』、『イリュストリロヴァンナヤ・ガゼタ』、『イスクラ』、『イリュストリロヴァンナヤ・ゼメイヌィ・リストク』のイラストを分析・整理し、基礎的資料集の作成に着手した。また19世紀後半のロシア知識人社会における「東アジア」表象の意味を明らかにするために、主要な思想家たちの著作集および主要な雑誌記事(とくに『ヂェーロ』誌)を検討した。それらの結果、ロシアにおける「東アジア」表象は、同時代の西ヨーロッパの思想家たちが提出していた「東アジア」表象(オリエンタリズム)の影響を強く受けているものの、同時にロシア独特の表象も生みだされていたのではないか、という研究上の見通しが得られた。すなわち、第一に、19世紀半ばまでのいわゆる啓蒙主義的世界史観から1870年代以降、スペンサー理論などの影響下で「優勝劣敗」的な世界史観が浸透するとともに、それへの反作用としてロシア独自の世界史理解が形成された。第二に、1868年の日本での明治維新および立憲体制の樹立は専制体制下のロシア知識人に精神的衝撃を与えた。第三に、総じて、1870年代以降、ヘーゲル的な「停滞するアジア」というイメージが残存するとともに「世界史に参入する東アジア」という新しいイメージも勃興するなかでロシア知識人社会のなかに「東アジア」にたいする新たな眼差しが形成されていった。以上の3つの見通しにたって、絵入り新聞でのビジュアル表象と言説を整理することが最終年度の研究課題となる。
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Research Products
(2 results)