2005 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半のロシアの絵入り新聞にみる東アジア表象にかんする基礎的研究
Project/Area Number |
14510403
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
下里 俊行 上越教育大学, 学校教育学部, 助教授 (80262393)
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Keywords | 19世紀後半 / ロシア / 絵入り新聞 / 東アジア / 表象 |
Research Abstract |
1、前年度までに整理した表象分析のための方法論的視点を精緻化するために、隣接分野(とくに地理学、社会学、文化人類学)での先行研究を概観し、また同時代の西欧諸国での東アジア表象に関する先行研究を検討し、19世紀後半のロシア帝国の対東アジア政策と関連したロシアのメディア状況の特徴を把握した。 2、前年に引き続き19世紀後半のロシアの絵入り新聞、とくに初期の主要メディアであるのイラストおよび言説を分析・整理し、同じくロシア知識人社会の動向を把握するために主要な思想家の著作集および主要な雑誌記事(とくに『ヂェーロ』誌)を検討した。また新たに主要雑誌での東アジア関連記事の主要な趨勢を書誌情報により抽出した。 3、結論として、19世紀後半のロシアにおける東アジア表象をめぐる次の三つの思想潮流を抽出した。 (1)19世紀半ばまでの啓蒙主義的アジア観と70年代以降の社会進化論の混交のなかで形成された「優勝劣敗」主義的な世界史イメージの枠内でのアジア表象が一つの潮流をなしていた。 (2)上記の潮流への反作用としてロシア独自の世界史イメージが宗教的理論を軸に再構築される。 (3)日本での明治維新および立憲体制の樹立など東アジアでの新しい政治的変化が肯定的な東アジア表象の形成の契機となり、上記(2)の潮流との結合による東アジアとの連携を志向する新しいロシア・イメージ(自己イメージ)が生成される。 4、上記の三つの潮流をより精密なテキスト・視覚史料分析により検証する必要性が今後の課題として残された。
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Research Products
(2 results)