2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510411
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
渡辺 和行 奈良女子大学, 文学部, 教授 (10167108)
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Keywords | 近代史 / フランス / ナショナリズム / 外国人 / アイデンティティ |
Research Abstract |
従来の研究では、国民統合という見地から近代国民国家に生きる人々の心身の国民化が論じられ、そのための装置として、学校や軍隊などの役割がクローズアップされてきた。しかし本研究は、統合から排除される外国人に注目することで、国民概念や国民意識の形成を搦め手から明らかにすることを目的としている。それは、人々がグローバルに移動する21世紀の社会で「共生」を考える上でも不可欠な作業だからである。こうした動機から、移民先進国であるフランスに焦点を当てて上述の問題を解くのが研究課題であった。 そこで、「国民革命」としてのフランス革命に注目し、革命期の議会で「国民」という言葉がいかにして発明され、「外国人」問題が議会でどう議論されていたのかに焦点を合てて、先行研究を中心に研究史をフォローしたのが今年度の成果である(Sophie Wahnich, L'impossible citoyen, l'etranger dans le discours de la Revolution francaise, Paris, 1997, 407p ; David Bastide, La nation d'apres les debats des assemblees revolutionnaires 1789 -21 janvier 1793, Villeneuve d'Ascq, 2001, 433p)。なお、研究課題に対する私の見通しについては、「ジャコバン的共和国と外国人」と題して昨夏に出版している。 また、本研究課題はフランスのナショナル・アイデンティティの形成とも深い関係があるが、これを論じた書物の翻訳に携わり、オリイ「フランス革命100年祭」、ノラ「ラヴィス国民の教師」、ヴィノック「ジャンヌ・ダルク」の3本を訳出した(ピエール・ノラ、谷川稔監訳『記憶の場』全3巻、岩波書店、2002-2003年)。これら3本の論文は、ともに国民の記憶作りをテーマとしたものであり、ラヴィスの初等教育の教科書が「外国人」を否定的に描いたことなどは、本研究課題にとっても新たな知見であった。それを踏まえて、現在、「英雄とナショナル・アイデンティティ」という論文を執筆中である。
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Research Products
(1 results)