2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510411
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
渡辺 和行 奈良女子大学, 文学部, 教授 (10167108)
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Keywords | ナショナル・アイデンティティ / ナショナリズム / 国民教育 / ユダヤ人 |
Research Abstract |
今年度の研究実績は、望田幸男・橋本伸也編『ネイションとナショナリズムの教育社会史』(昭和堂、2004年3月刊)所収の論文「英雄とナショナル・アイデンティティ-第3共和政フランスの歴史教育とナショナリズム-」である。このように、今年度はナショナル・アイデンティティ関連の研究を深めた。研究課題は、「外国人の誕生」を問うものであるが、「外国人の誕生」は、実は、「国民の誕生」とパラレルに進行するからである。つまり、国民の資格や国民性の議論、ナショナル・アイデンティティの問題に帰着するのである。今年度はとくに、前期第3共和政(1870-1914)のフランスが、ナショナル・アイデンティティをいかに注入して「国民」形成を図ろうとしたのかを分析した。方法としては、小学校の歴史教科書を取り上げ、誰がフランス史の英雄として位置づけられ、いかに叙述されているのかを、小学校の課程別(初級、中級、上級)および教科書の出版年別に検討し、共和派の教科書もカトリックの教科書も英雄を通して「祖国崇拝」を強調したことが明らかになった。 その他の研究実績として、研究課題に関わる2冊の書評を行った。まず、わが国で「ナショナル・アイデンティティ」という語を冠した最初の研究書と言いうる『ナショナル・アイデンティティ論の現在』(中谷猛・川上勉・高橋秀寿編、晃洋書房、2003年3月)の書評を行った(『立命館大学言語文化研究』に掲載)。ついで、20世紀前半のフランスで、ファシスト社会主義と反ユダヤ主義を掲げた作家ピエール・ドリュ=ラ=ロシェルを論じた『政治的ロマン主義の運命』(有田英也、名古屋大学出版会、2003年9月刊)の書評を行った(『図書新聞』2656号、2003年12月6日号に掲載)。 現在は、フランス革命期の「国民/外国人」の議論を整理している。
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