2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510413
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
前野 弘志 広島大学, 大学院・文学研究科, 助手 (90253038)
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Keywords | ギリシア / 碑文 / 文化 / ポリス / 統合 / リテラシー |
Research Abstract |
まず、碑文文化とポリスの統合に関する仮説的理論の構築については、既に「ポリスとコミュニケーション」山代宏道編『危機をめぐる歴史学』の中で論じたので、今年度の作業は以下の3点である。第一に、アテナイにおける碑文文化のデータベースを作成した。まず、碑文史料集IGのアッティカ関連の箇所を購入し、全碑文のリストを作成し、碑文一件ごとに、発見場所、建立場所、テキスト、翻訳、写真、レリーフ、キーワードなどのデータを入力していった。これまでに収集した碑文の写真(2001年12月にアテネで、2002年11月にオックスフォードで、2003年3月に東京で)は、これから入力しなければならない。第二に、碑文の場所に関する論文の準備をした。まだ完成はしていないが、2002年5月に日本西洋史学会で発表した「古典期アテナイにおける公文書-文書館文書と碑文文書-」を元に、アクロポリス、アゴラ、ペイライエウス、デーモス・フラトリアに分けて、4本の論文を準備している。第三に、碑文の場所に関する論考から発展して、法廷における文書の使用に関する論文を準備した。今年度はまだ、論文という形で成果の公表は出来ていないが、上記した準備中の論文は、平成15年度中には完成させるつもりである。 これまでに得られた新しい知見も3点ある。第一に、碑の形態論に関する見通しがついたこと。即ち、碑は、もともとは奉納物を支える円柱の台座であったが、それが発展して薄い石板になったこと。第二に、碑文の建立場所には一定のルールがあり、関連する碑文は互いに結び付けられていたこと。第三に、法廷は口頭による説得の場と考えられてきたが、実際には、それだけではなく、文書による説得も大きく働いていたこと、である。
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