2002 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋戦争前の在ロサンゼルス日本人社会における公共団体の研究
Project/Area Number |
14510422
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
米山 裕 立命館大学, 文学部, 助教授 (10240384)
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Keywords | 日本人移民 / 日系アメリカ人 / マグロ漁 / 漁民 / 日本人会 |
Research Abstract |
今年度は2つの分野において、大きな進展があった。1つは、日本人移民のなかでもほとんど研究がなされてこなかった漁民についての基礎研究を進めることができたことである。本研究は、ロサンゼルス日本人社会における公共団体の調査・分析を中心においているが、その最重要団体である羅府日本人会の中で、漁業地区の影響力が大変大きかったことが予備調査段階でわかっていた。本研究着手後、その漁民を理解するための基礎作業として、(1)魚の生態と漁業技術、(2)ロサンゼルスという都市の社会経済的状況、(3)カリフォルニア州政府の漁業・狩猟局の活動、の3分野が必要であることが判明し、今年度はその(1)と(2)について研究を進めた。その結果、(A)日本人移民が従事した鰯・鮪漁は、南カリフォルニア水域に「異常」に大量の鰯・鮪が出現した時期に成立したこと、(B)日本で鮪漁が巨大産業化する1960年代よりも遙か以前の1910-20年代にカリフォルニアの日本人移民が鮪漁を形成したこと、(C)そのための社会基盤がちょうどその頃のロサンゼルスに整いつつあったこと、がわかった。次年度には研究論文として成果を発表する予定である。 もう1つの分野は、戦前の移民社会が刊行した年鑑・住所録等の電子化作業である。今まで体系的に利用されることの全くなかった住所録等は、実は移民社会の職業、居住地区、家族構成などの社会学的データの宝庫である。それらを電子化・データベース化したものは、本研究にとって極めて有効な資料となると同時に、今後の様々な研究の基礎ともなろう。今年度は、サンプルデータを使ってスキャン・OCR・データベース化などの基礎作業の準備を進めることができた。来年度は、実際の住所録等の入力作業に着手する。本研究における直接の利用形態としては、公共団体の主要人物の社会経済的データの抽出と、それ以外の移民杜会構成員との比較を予定している。
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