2003 Fiscal Year Annual Research Report
石器石材の岩石学的特性が石器製作に及ぼす影響に関する実験考古学的研究
Project/Area Number |
14510436
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
絹川 一徳 財団法人大阪市文化財協会, 調査研究部, 学芸員 (50204938)
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Keywords | 旧石器時代 / 石器製作 / サヌカイト / 黒曜石 / 実験考古学 / 石器石材 |
Research Abstract |
今年度は実際の出土遺物との比較研究に重点をおいた。特に、石器遺物に認められる微細剥離痕が、(1)石器製作時に地床面落下などのダメージによって生じる場合、(3)調整加工により生じる場合、(2)使用により生じる場合の3パターンがあることが予測されたが、その3者の違いについて検討を行った。サヌカイトの場合、これまでの研究では、不規則な微細剥離痕の場合、使用痕として認定される場合が多かったが、実際、剥離時のダメージによるものと使用によるものの見分けが困難なものが存在することが分かった。調整加工の方法と使用対象物(骨や木といった硬質物質)の場合、作業における運動方向が同じであれば、当然、同一の剥離痕が生じることになる。むしろ、加工なのか使用なのかの判断は、剥片や石器の形状によって判断可能である場合が多い。定型的な石器であれば、機能部の判断は容易であり、剥片においても微細剥離痕がどの部位にあるかで機能部の推定が可能である。同様に、微細剥離痕の使用時形成と加工時形成の判別は黒曜石が判別しづらい場合が多かった。珪岩・石英岩などの硬質の岩石は、そもそもハンマーストーンによる加工しか行えないため、細部調整が急斜度の仕上がりになりやすい。したがって、一定の厚みがある必要があり、小型石器は総じて加工頻度を高くしづらい。また、使用によるダメージは少ないので、使用有無の判定は肉眼では困難であった。 サヌカイトにおいては、縄文時代草創期に有茎尖頭器が出現するが、黒曜石・チャート・頁岩等の製品とは、加工状況に大きな相違が認められない。長原遺跡等の接合資料を検討した結果・サヌカイトはより緻密なものが選ばれるものの、製作技法に石材の違いにより根本的な相違が認められなかった。加熱処理といった素材の物理的変性を検討する必要がある。
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